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カルチャー

【BOOK】夏休みに子どもと読みたい戦争の絵本5選

2017.08.06

夏休みは平和について親子で考える機会に

日本が終戦を迎えた夏という季節は、戦争について思いを巡らすことが増える時期です。
夏でなくても、地球上で起きている悲しい争いや、
子どもたちがこれから生きていく時代への漠然とした不安を感じ、
小さなお子さんとも少しずつ、
戦争や平和について考えていきたいと思っている方々も少なくないのではないでしょうか。
幼児期~小学生のお子さんとぜひ手にしてみていただきたい戦争に関する絵本をご紹介しますが、
絵本が訴えるメッセージは、読み手の世代を問わず心に迫るものがあると思います。

■『まっ黒なおべんとう』 文:児玉辰春、絵:長澤 靖、 新日本出版社

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子どもや夫など誰かのお弁当を毎日作っていると、
「あー、面倒だなー」と時には感じることも。
しかし、空になって戻ってきたお弁当を見るのは、嬉しいものですね。

中学1年生のしげる君は、
空襲の火災の広がりを防ぐために家を壊す仕事に毎日出かけていました。
そんな中でも歯医者になって、お父さんの後を継ぐという夢を抱きながら。
お母さんが作った大豆と麦の混ぜ飯のお弁当を、
食べるのを楽しみに持っていつもと同じように出かけたしげる君は、
そのお弁当を食べることができないまま、家族のもとに帰ることはありませんでした。

実話をもとにした絵本で、まっ黒なお弁当箱は、広島平和記念資料館に展示されているそうです。
笑顔で出かけたしげる君の姿と、まっ黒なおべんとうを抱えて見つかったしげる君の姿の差は、
親子で読むことは一層つらいかもしれません。
しかし、「お弁当」という身近な存在を通した日常と、
それをいとも簡単に寸断してしまう戦争の非情さ、理不尽さは、
幼い子にもしっかりと届くのではないかと思います。

■『よしこがもえた』 作:たかとう 匡子 たじまゆきひこ、 新日本出版社

 

978-4-406-05581-9

小学1年生の「私」と3歳の妹が「よしこ」が、
大きな空襲があった神戸から避難した姫路のおばあちゃんの家。
おなかをすかせながらも2人で一緒に遊び、
お母さんは3人目の赤ちゃんを自宅で出産しました。
生命の誕生が家族に希望をもたらし、幼い姉妹も手を取り合って喜んだその夜、
姫路は空襲に襲われました。

誕生した命、そして、一瞬にして奪われた命。
納得することなど到底できない思いで皆が見守る中、
よしこは3年の生涯を苦しみながら閉じました。

誰もが答えを知っているはずである問いを、
最終ページで絵本が問いかけます。
向き合うのがつらく、でも、しっかり向き合わねばならない問いです。

■『一つの花』 作:今西祐行、絵:鈴木義治、ポプラ社

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お子さんが片言の単語を繰り出すようになり、
初めて覚えた会話らしい言葉は何ですか?
きっと、お子さんによって、様々でしょう。
親にとっても、小さな子どもとの会話が少しずつ成り立っていくのは、とても楽しいですね。

『一つの花』に出てくる幼いゆみ子がはっきり覚えた最初の言葉は
「一つだけちょうだい」でした。
戦争の激しい物資不足の頃、おなかをすかしたゆみ子がごはんやおやつのたびに、もっと欲しがり、
「一つだけよ」と分けてくれたお母さんの言葉が、ゆみ子の最初の言葉になったのでした。

やがて戦地に赴くときがきた、ゆみ子のお父さん。
言葉を覚え始めた頃は、イヤイヤ時期とも重なる頃。
様々な思いを胸に夫を見守るお母さんの前で、ゆみ子の「一つだけちょうだい」が始まって止まらなくなり、
泣き出してしまいました……。
お母さんは、言うことをきかないゆみ子を前にどんな気持ちになったでしょう。
夫が無事帰ってくるという保証はないのに、その別れの場面で子どもはぐずり、
思いを伝え合うこともままならない……。

ふと姿を消したお父さんが、ゆみ子にあるものを持ってきました。
そして、苦しい状況の中でも、お父さんやお母さんがゆみ子の成長に大きな喜びを感じた「一つだけ」の言葉、
これが、お父さんからゆみ子への、最後の言葉になりました。

ゆみ子の成長とともに、もっともっとたくさん紡ぎ出されていく言葉を、
お父さんは、戦地に向かう列車の中でも、戦いの最中にも、想像したかもしれません。
小学校の教科書にも採用されているこの物語。
私も子どもの頃に読んだ記憶がありますが、
自分が親になってから読むと、また様々な思いや悲しみがこみ上げてきました。

■『まちんと』 作:松谷 みよ子、絵: 司 修、 偕成社

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「まちんと」って何でしょう?
それは「もうちょっと」という意味。
原爆で一瞬にして焼けただれた幼い女の子。
もうすぐ3歳になるはずだったのに。
大好きなトマトを「まちんと まちんと」と声を絞り出して欲しがりながら、
亡くなっていきました。

淡々とした文章、生々しくはないけれど原爆化の風景の不気味さを伝える絵。
怖さも、哀しみも、ずっしりと伝わってきます。
1度読むと、しばらくは、再びページをめくることができなくなるかもしれません。
それこそが、戦争を繰り返してはいけないという気持ちそのものなのではないでしょうか。

■『なぜあらそうの?』 作・絵:ニコライ・ポポフ、 BL出版

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野原でにこやかな表情を浮かべながら、1本の白い花を手にしているカエル。
とても穏やかな光景です。
そこに突然姿を現したネズミは、しばしの間の後、カエルに跳びかかって花を奪いました。
満足げなネズミと、あきれ顔のカエル……。この小さな事件が、破滅への始まりでした。

『なぜあらそうの?』は文字のない絵本です。
文字がないから一層、急展開で破滅に進んでいくカエルとネズミの戦いに目が釘付けになり、
気づくと何度もページをめくってしまいます。

表紙の牧歌的な雰囲気からは想像できない、対照的な衝撃的な結末。
事の重大さに皆が気づかず、笑顔で全面対決に進んでいく様子。
悲しみと怒りと、空しさしか残らない原っぱ。戦争にまでいたらなくても、
こういうことは日常の中にあふれているような気もします。

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私たちは、体験した戦争を伝えるということはできません。
戦争を体験して伝えることができる方々が減っていくのは、止められないことです。
しかし、体験していないことでも、一緒に考えるという形で伝えていくことができます。
今も地球の中で起きている戦争への怒りを子どもたちとも少しずつ共有し、
自分も、子どもたちも、さらに続いていく世代も、戦争というものを体験しないために。
(千葉美奈子)