世代を超えて愛される絵本『ねずみくんのチョッキ 』 (1974 年刊行 ポプラ社)は、シリーズでは累計400万部を超え、現在37巻まで続く人気作品です。ココフル読者の中にも、子どものころに楽しく読んだ方も多いのではないでしょうか。
その誕生 45 周年を記念して「誕生 45 周年記念 ねずみくんのチョッキ展 なかえよしを・上野紀子の世界」が昨年は神奈川、静岡、今年 1 月には大阪で開催され好評を得ました。いよいよ、6月2日より松屋銀座会場で開催されます。それに先立ち、作者であるなかえよしを先生の合同取材会がオンラインで行われ、ココフル編集部も参加しました。
目次
シリーズ37作目となる最新刊の『ねずみくんのピッピッピクニック』は、どんなお話でしょうか。
ねずみくんはお友達とピクニックに行こうとしますが、行き先がなかなか決まりません。結局決まったところが、いつも遊んでいる家の近くの公園だったというお話です。
コロナ禍の状況で、遠くに行けない子ども達にぴったりの内容なので、とても共感できそう。
実はコロナ前の2年前にラフが決定していたとのこと。
そんな新刊のエピソードから和やかに取材会は始まりました。各社から様々な質問が出ましたが、一つひとつ丁寧にお答えするなかえ先生の姿に、誠実なお人柄が現れていました。
長く続く“「ねずみくんの絵本」シリーズ”の魅力とはいったいどういうものなのでしょうか。
最新刊の『ピッピッピクニック』では、実は毎日遊んでいる公園が居心地がよく、友達みんなが楽しめる場所であったということに気づきます。
これは、シリーズ全体の世界観にもかかわるものです。
なかえ先生は語ります。
「旅行できないからつまらないのではなく、身近なことでも面白いことはたくさんあるというお話です。ねずみくんのシリーズでは常に、生活の中でのちょっとしたこと、普段気づかないことに気づく。それがお話になればいいなと考えています。身近な出来事が多いので、シリーズを通して共感を呼んでいるのかなと思います」
なかえ先生は、そんな日常の出来事を見逃さないように、常にねずみくんの視点で世の中を見て、メモをとっているとか。ちょっとかわいいですね。
また、“「ねずみくんの絵本」シリーズ”は絵も文もこれ以上そぎ落とせないほどシンプルです。色もカラフルではなく、シンプルな鉛筆画。説明文も一切なく、簡単なセリフがあるのみです。背景もなく、ページを開くと余白が多いのが目立ちます。
「余白は子どもたちの想像力で埋めてもらわないといけない」となかえ先生。また保育士さんやご両親といった本の読み手も、補足し、語りかけ、想像力を膨らませながら読んであげてほしいとのことでした。
「たとえば、ゾウさん、ライオンさん、ブタさんで、声の表現の仕方や声をうまく変えていただくと面白いと思いますよ」
主人公のねずみくんがとても小さくて、お友達はとても大きかったり、強そうだったりそれぞれ個性的。ねずみくんが小さいということも一つのテーマだそうです。
「明るくて声が大きいとか、体も大きいというものに目が行きがちです。けれども大切なことは、地味に思えても思いやりとか心とか、目にみえないものの中にこそある。それにちゃんと気づけるような子になってほしいなと思うんですね。本を読んだあとに、何か気持ちがよくなる様なお話にしたいと思っています」
“「ねずみくんの絵本」シリーズ”を描くうえで、大切にしたり参考にしている本は、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物』と『最後の一葉』だそうです。この二つがすべての根底にあるということでした。だからねずみくんの本は優しいのですね。
ココフル編集部も質問をしてみました。「ねずみくんの絵本」シリーズは、0歳からでも読んであげられる本だと考えていますが、特に小さな子に読み聞かせるときのポイントなどはあるのでしょうか。
なかえ先生によれば、小さい子はストーリーがわからなくてもいいのだと言います。
「ねずみくんのシリーズの登場人物の表情は豊かで、大きな口を開けたりどなったり泣いたりする絵が、いろいろあります。そういう絵を見ながら子ども達が感情移入できて、共感してくれて、絵本の中で頑張っているねずみくんを見てもらえるといいかなと思います」
絵を見ながら、「小さいね。大きいね。哀しそうだね。うれしそうだね」と子ども達に語り掛けてみると楽しい時間が過ごせそうですね。
さて、なかえ先生は、どんな子どもだったのでしょうか。
戦中戦後に子ども時代を過ごした先生は、とにかく野山を駆け回っていたそうです。
「一日中外で遊んでいても、勉強しなくても親はそれほど心配しない時代。絵を描くことが得意で、勉強はできなかった」となかえ先生。
そんな先生は、人とは少し違うなと感じている子や、子どもたちを育てている大人にも、やさしくメッセージを送ってくれました。
「勉強を何でもできるわけではなくても、何か得意なことがあるはず。それを生かしてやる。見守ってやるだけでその子は伸びますよ」
なかえ先生は、まんべんなく勉強ができたわけではないのですが、絵が得意だったので、絵の世界に飛び込みました。その後、妻となった画家の上野紀子先生と知り合い、なかえ先生がお話を考え、上野先生が絵を描くという二人三脚で長く活躍されました。
「好きなことをお互いやっているので、どんな大変なことでも楽しかったです。アイデアが出ないというのも、また楽しい。出るまで考えればいいのですから(笑)。大変なことがうれしい世界です。楽しくやっております」というなかえ先生の言葉に、取材会のメンバーは感動したり、驚いたり。ほーというため息すら出ていました。
なかえ先生は、以前は締め切りを守ることが精いっぱいで、あまり上野先生の絵をじっくり眺めることもなかったそうです。しかし、現在パソコンに取り込んだ絵を、拡大し、じっくり見る作業が必要となり、改めてその絵の細かさ、ていねいな仕事ぶりに驚かされているそうです。
「“『ねずみくんの絵本』シリーズ”は、BからHまで10本以上の鉛筆を使って、緻密に丁寧に描かれています。展示会では、その丁寧な絵を実際に見て、何か感じてみてください」
豊かな心と温かなお人柄と確かな技術で、長く子ども達の心をとらえてきた“「ねずみくんの絵本」シリーズ”、その秘密がわかったような気がした取材会でした。
さて、6月2日より始まる銀座松屋での展覧会に関して見どころをご紹介します。
原画やスケッチの展示に加え、フォトスポットや自分で作る絵本など参加型展示もたっぷり。家族みんなで楽しめますよ。
シリーズ最新作を含むラフスケッチや絵本原画など約180点が展示されます。
最新刊である『ねずみくんのピッピッピクニック』のなかえ先生によるラフスケッチを松屋銀座会場で初公開!
小学生以下の来場者にプレゼント!ねずみくんになりきって展覧会を楽しめます。
※なくなり次第終了となります。
会場では人気の高い名場面のフォトスポットを設置。みんなで写真撮影を楽しめます。
オリジナルの1冊がつくれる絵本『ねずみくんのスタンプ』を会場限定で発売。
バラエティ豊かなねずみくんグッズが大集合
展覧会会期中、松屋銀座 8 階 MG カフェ にて、「 ねずみくんのチョッキ展 」とコラボレーションしたメニューが提供されます。 メニュー内容や詳細などは決まり次第、公式サイトにてご案内されます。お楽しみに!
やさしいねずみくんの世界を、家族で楽しんでみませんか。
「ねずみくんの絵本」シリーズは、夫で絵本作家のなかえよしをさんが構成を考え、上野紀子さんが絵を描くという二人三脚のスタイルで、45年間作り続けてきました。共通するテーマは「思いやり」と「ユーモア」。いまの時代を生きるこどもたちにとって、大切なものが描かれています。
■会期:2021年6月2日(水)~6月14日(月)※開場時間は公式サイトをご確認ください
※入場は閉場の30分前まで(最終日は17 時閉場)※営業日・開場時間が変更になる場合があります
■会場:松屋銀座8階イベントスクエア
■住所:〒104-8130東京都中央区銀座3-6-1
■主催:ねずみくんのチョッキ展実行委員会特別協力:ポプラ社
■入場料:一般1000円(800円)、高校生800円(600円)、小中学生600円(400円)
■グッズ付入場券
一般1500円(1300円)、高校生1300円(1100円)、小中学生1100円(900円)
※未就学児は入場無料※()内は前売料金。前売券は6月1日(火)まで販売。
■公式サイト:https://www.poplar.co.jp/pr/nezumikun45th/exhibition/
■本展における新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた取り組み
1.入館時の検温
2.館内でのマスク着用と手指消毒のお願い
3.ソーシャルディタンス確保のお願い
4.展示ケースの定期的なアルコール消毒
5.飛沫防止シートの設置や金銭授受の際のトレイ使用
6.従業員の検温を含む体調管理、手指消毒の徹底