緑豊かで文化・芸術施設が集結する上野公園。
その上野公園に隣接する国際子ども図書館をみなさんご存知でしょうか?
本が好きになれる要素がたくさんある図書館!というだけでなく、近代建築の魅力も詰まった魅力溢れるスポットなのです。
そんな国際子ども図書館の魅力をご紹介します。
目次
国際子ども図書館は2000(平成12)年に開館した、日本唯一の国立の児童書専門図書館です。入場無料で予約も不要。一部を除き年齢制限無く誰でも利用することができます。本の貸し出しは行なっていませんが開架の他、日本語・外国語を合わせて約48万冊以上(2024年3月時点)の蔵書があり、調査研究のためであれば申請して閲覧可能です。
1990年代の子どもの読書離れの懸念から、「子どもの本は世界をつなぎ、未来を拓く!」という理念のもと国際子ども図書館は開館しました。
そしてこの理念を実現するため、3つの役割を担っています。
(1)児童書専門図書館として、日本や海外の子どもの本を集めて、児童書や子どもの読書に関わる人たちを支援すること。
(2)子どもの本のふれあいの場として、全ての子どもに図書館や読書に親しむきっかけを作ること。
(3)子どもの本のミュージアムとして、子どもの本の魅力を紹介すること。
この役割を果たすために館内には様々な工夫が施されています。
国際子ども図書館は1906(明治39)年に帝国図書館として建てられた明治期ルネサンス様式の建物を再生・利用したレンガ棟と、2015(平成27)年に新たに出来たアーチ棟で構成されています。
100年以上の歴史のある建物のレンガ棟
1990年代にレンガ棟は改修工事が行われましたが、歴史的建造物を保存再生しつつ、現代施設として活用できるように徹底的に補修、復元が施されたそうです。
そしてその際に東京都の歴史的建造物にも選ばれています。
アーチ棟はレンガ棟の裏側に位置しています。
曲線が美しいガラス張りの建物
2015年のアーチ棟の建設には世界的建築家の安藤忠雄氏も参加。美しい弧を描く曲線のデザインは、本をめくるようなイメージで設計されたそうです。レンガ棟とアーチ棟は2階の連絡通路で繋がっており、外に出なくても移動が可能となっています。
「子どものへや」は、主に小学生までの子どもを対象とした部屋で、広く親しまれてきた絵本や読み物、子どもの好奇心にこたえる知識の本が約1万冊置いてあります。
明るく開放的な雰囲気
円形の書棚に囲まれて、円形の机が中央にあり気に入った本をゆっくり親子で読むことができます。円形書棚の内周には絵本や読み物、外周は図書館の一般的な分類法である日本十進分類法にもとづいて知識の本が並んでいます。
どんなジャンルの本でもあるので興味の向く方向に各々引き込まれていく
円卓以外にもベンチが点在して置いてあるため部屋のどこにいても本がすぐ読める空間でした。部屋の中にはタッチパネル式の検索用PCがあり、ひらがなが読める子であれば本を検索することができます。
この天井は光天井といって、どの場所で本を読んでも影ができにくいように工夫されています。
子どものへやの奥には、「世界を知るへや」があります。
約120の国や地域の地理・歴史・文化を紹介する国内外の絵本や読物が約2,000冊置いてあります。
このお部屋の「世界で読まれている日本の子どもの本」コーナーで一緒に行った娘と盛り上がりました。
日本で発行された馴染みある絵本が様々な国の言語で翻訳されているのです。日本語版と同じ絵や全く違う絵の本、大きさが変わったり、綴じの左右が反対になったりした本がありました。言語が分からなくても見比べるだけで面白かったです。
絵本を通じて世界には色んな言語や文字があると伝わったらいいですね!
ちなみにこちらのお部屋は帝国図書館時代、貴賓室として使用されていたそう。「旧帝国図書館の中で最も格式が高く、一般の利用には供されていなかった」部屋を、国際子ども図書館として開館するにあたって開放したそうです。漆喰の装飾が施されている天井や、寄木細工の床は高級感がありますよ。
国際子ども図書館では、「子どものためのおはなし会」や「小さな子どものためのわらべうたと絵本の会」が定期的に開催されています。最新の情報はホームページかSNSを確認してみてください。
「児童書ギャラリー」には明治から現代までの絵本の展示があり、本の歩みをたどることができます。
大人には懐かしの絵本がいっぱい
絵本史と児童文学史に分かれていて、1500冊の絵本や児童書が時代別に展示されています。とても見ごたえのある展示で、子連れでなくひとりで再訪してゆっくりみたいところです。
こちらのお部屋、以前は特別閲覧室だったそう。部屋の奥には当時書庫から資料を運ぶために使われていた、小型の本のエレベーター跡があるので見つけてみてください。中央には「竹小舞」という技法が使われている4本の漆喰化粧柱があります
「調べものの部屋」は主に中高生向けの調査やレポート作成に役立つ資料を中心に約1万冊の本があります。
3階は本のミュージアム。その時によってさまざまなテーマで子どもの本の展示会を開催しています。
こちらのお部屋にも注目すべき建築物があります。
天井や壁には漆喰装飾が施され、部屋の奥にある出入り口には「小さな神殿」を意味するエディキュールがあります。
神秘的な扉‥帝国図書館時代は閲覧室と書庫との出入り口だったそう
帝国図書館はレンガによって建物を支える構造になっており、建物の内部に100年以上前の赤レンガが使われています。当時の赤レンガを見ることができるのはこのお部屋のエディキュールだけです。
同じく3階にある「ホール」は高い天井に大きな窓から降り注ぐ光が心地の良い空間です。
音楽イベント等が開催される他、後方には図書館の歴史や魅力を紹介する展示コーナーがあります。ホール横部分にはガラス張りの張り出し窓が設けられた場所があり、レリーフ彫刻が素晴らしい建物の外壁を間近で見ることができます。
手で触れてもOKだそう
3階のラウンジは椅子が設置されていてほっと一息つける空間です。
この白いレンガの壁は帝国図書館時代の外壁だった
ガラス張りから降り注ぐ光を感じて気持ちよく過ごせます。
他に印象に残ったのは1~3階まで吹き抜けになっている大階段。
改修の際に鋳鉄製手すりの外側にガラス手すりをつけたそう
明治期の面影を残しており歴史を感じます。100年以上前のシャンデリアも立体的な装飾で素敵でした!
今も現役で点灯している
レンガ棟を歩いていると明治時代にタイムスリップした気分にさせてくれます。
アーチ棟には児童書研究資料室や、研修室があります。
児童書研究資料室は原則18歳以上向け。児童書に関する調査研究のための資料室です。利用者カードを作成すると利用できますが、親子で訪れた際はあまり用事はないかもしれません…。
レンガ棟1階の「休憩・飲食・授乳スペース」は、広々とした空間にイスやテーブルが置かれています。
靴を脱ぐスペースもあるのでハイハイの赤ちゃんも休憩できる
こちらは飲食OK。持ち込みも可能という事で我が家は持参したお弁当を食べることもあります。更にはおむつ交換所、授乳室、調乳専用の浄水給湯器も完備されていて、小さな子ども連れでも安心して過ごせます。
エレベーターもあるので館内をベビーカーで移動することができます。
レンガ棟1階にカフェテリアもあります。
カフェ「Bell」ではリーズナブルに食事・軽食・喫茶を利用できます。
最初に食券を購入し、セルフ形式で受け取りと返却をします。
お得セットは650円!
子ども用の椅子や子ども用カトラリーも用意されていました。
平日に行ったので頼めなかったけれど週末限定のお子様ランチも気になるところ。
カフェテリアもガラス張りの心地よい空間
カフェ目当てで来館したくなりますね!カフェテリアから中庭に出ることができます。テラス席があったり、ちょっとしたお散歩コースがあるので調べ物をして行き詰まった時はリフレッシュすることができます。
中庭でレンガ棟とアーチ棟を眺めているだけでゆったりとした時間が過ごせる
「国際子ども図書館」を訪れると子どもが本と出会う空間が大事だなと改めて実感します。言葉を学び、更に感性や創造力を豊かにする本たちに出会え、触れ合い読書の楽しみを見出して欲しい場所です。
上野公園に隣接しているため、お散歩したり他施設と合わせて行くと丸一日楽しめますよ♪
入館無料なので気軽に訪れることができるのも嬉しいポイント。
みなさんもぜひ行ってみてはいかがでしょうか。(取材・文/北川まな)
※一部の写真は、許可を得て国際子ども図書館HPより引用しています。
名称 | 国立国会図書館国際子ども図書館 |
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WEB | https://www.kodomo.go.jp/index.html |
定休日 | 月曜日、国民の祝日・休日(5月5日のこどもの日は開館) 年末年始 第3水曜日(資料整理休館日) |
住所 | 〒110-0007 東京都台東区上野公園12-49 地図を見る |
アクセス | 電車:JR上野駅公園口より徒歩10分 東京メトロ 日比谷線・銀座線 上野駅7番出口より徒歩15分 バス:都営バス上26系統[上野公園<>亀戸駅前](別サイト) 「谷中」バス停 下車徒歩5分 台東区循環バス「東西めぐりん」(別サイト) 「旧東京音楽学校奏楽堂」バス停 下車徒歩2分 |
料金・参加費 | 無料 |
お問合せ | 電話: 03-3827-2053 |
駐車場情報・駐車料金 | なし。上野公園近隣に駐車場あり。 自転車:駐輪場あり |
開館時間 | 9:30-17:00 |