■都会の夜に、平安時代が出現
平安時代の終わりから、室町時代にかけ日本中で大流行したという「田楽」。もともとは、田植えの慰安の意味合いをこめて始まったものでした。
独自の衣装をつけた法師たちが、鼓やささらなどを持って、舞ったそうです。
その田楽は、次第に能へ姿を変えていき、田楽そのものは消えていくのですが、現代に蘇らせる試みがなされました。
復活の大きな力となったのは、狂言師であり総合芸術家であり、特定非営利活動法人ACT.JTを設立した五世野村万之丞さん(1959~2004)です。
「大田楽」とは、中世の「田楽」に、各地の伝統芸能・民俗芸能のみならず、西洋の動きや音楽をとりいれ、舞踊家、音楽家、俳優たちの協同作業で練り上げられ、五世野村万之丞氏が構成演出したものです。
色とりどりの衣装や音楽はインターナショナルでもあり、古風でもあり。
美しくも不思議な世界が目の前に繰り広げられます。長野パラリンピックといった大きなイベントのほか、不定期に日本各地で上演され、その都度違う構成や演出で、市民が誰でも参加できるのが大きな特徴です。
去る11月5日(土)、東京芸術祭2016の一環として池袋にて「大田楽いけぶくろ絵巻」が行われました。
としまセンタースクエアで出発の躍りを披露したあと、グリーン大通りを総勢約100名の法師たちが練り歩き、南池袋公園でパフォーマンスを繰り広げ、観客も一体となり、大いに盛り上がりました。
●行進(往)
心地よい古の響きとともに、100名の法師たちの登場です。
▲コスプレ軍団も登場です。
●物着
法師たちは、それぞれの座につき身支度を整えます。
●番楽
躍動感溢れる躍りです。
●王舞
鼻高面をつけた王舞が場を浄めます
●獅子舞
2頭の獅子が跳ね回ったり、絡み合いながら舞います。
●兎楽
変わった足踏みをしながら地霊を鎮め、五穀豊穣を祈願します。
●散華
汚れなきものの象徴である稚児が華を撒きます
●奏上
一行の長である田主が、神に向かって一座の来訪を報告し奏上を読み上げます。
●段上がり 総田楽
楽器を囃しながら、ますます佳境へとはいっていきます。
▲ コスプレあり。中国古来の技、変面も登場し、大いに会場は湧きます。
●乱舞・宝撒き・蜘蛛巣
躍り手と観客の垣根を越えて即興で躍ります。
▲子どもたちも思わず躍りの輪に加わります。
●行進(復)
田楽法師たちはふたたび行列を組み、音楽を囃しながら去って行きました。
名残惜しくも、1時間ほどのパフォーマンス、美しい絵巻物は都会の闇に消えていきました。
「大田楽いけぶくろ絵巻」は来年も開催が決まっています。
都会の夜に、平安時代にタイムスリップしたような不思議な世界が繰り広げられます。
ぜひ、その旋律やリズム、摩訶不思議な美しさに身をゆだねてみてはいかがでしょうか。
不思議なパワーがみなぎってきますよ。
(取材・文 宗像陽子)