2022年9月に起きた「3歳園児バス置き去り事故」。まだまだ記憶に新しいですね。亡くなってしまったお子さんの辛さ、ご遺族の無念さを思うと、絶対にこれからもあってはならない事故という思いが募ります。
この事故をうけて中古車販売のガリバーは、地域の幼稚園事業者やそこへ通う子ども達、その家族が安心して通園できるよう、オクト産業株式会社(以下オクト)とプロジェクトを組み、「ガリバークルマ支援第2弾プロジェクト」を開始し、幼稚園・保育園・認定こども園などの事業者を対象に通園バス100台に置き去り防止の安全装置(ブザー)の無償取り付けを進めると発表しました。
記念すべき第1号の無料取り付けが、2022年10月28日に東京都世田谷区と福島県郡山市で行われると聞き、編集部はさっそく東京の会場に行ってきました。
東京の会場となったガリバー世田谷成城店
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オクトは、製品開発の専門家集団でしたので装置の研究・開発は得意だったものの、全国に展開するルートや車に装置を取り付ける設備やリソースを持っていません。そこで全国に販売網を持つガリバーが協力したということです。
後部座席のうしろで赤く光っているのが装置です
オクトが開発した新しい装置の仕掛けはいたって簡単。送迎バスのエンジンを切ると、車の後ろに取り付けた装置が赤く点滅し、ブーブーとかすかに鳴ります。後ろの席まで行き、ブザーを手で止めないと鳴りやみません。つまり必ず後部座席まで行くので、園児の置き去りが発生しないというわけです。
でもかすかな音では、置き去りが発生しても誰にも気づかれないのでは?
ご安心ください。かすかな音は、5分経つと(時間は設定可能)いきなりキュインキュインキュインという大音量になります。うっかり置き去りにしていたとしても、この大音量で気づきます。必ず人の手でスイッチを切らないといけないという仕掛けがとてもいいと思いました。
奥で点滅しています。スイッチを切らないでいると、大音量が響きます
この装置を開発したオクトの安達社長に、開発の経緯を伺いました。
「亡くなった園児もバスを運転していた園長もお気の毒です。ヒューマンエラーをなくさないと同様な事故はまた必ずおこってしまうでしょう。なんとか良い製品を作って社会に貢献したいと考えました」と安達社長。
無料にしたのはどうしてでしょうか。
「まずは全国に広めることが必要だと考えました。装置にはアンケートも添付し、現場の意見も取り入れながらさらにより良い製品を作っていきたいと思います」。
今回の装置は、車の中で有線を使い、無線ではありません。赤外線チェックなどの複雑な仕様もありません。複雑化することでどうしても不具合が生じてしまう可能性が増えることから、誰でも簡単にでき、確実なアイデアを採用したとのことでした。
また、ガリバー社員は、日常業務とは別に有志が集まってプロジェクトに参加したそうです。まだ製品ラインができていないこともあり、複数の会社の連携が難しい中、短期間でこの日を迎えることができたとほっとした表情を見せてくれました。
この日、第1号の取り付けを完了した園の担当者は「子ども達の命を預かっているというプレッシャーやストレスはどうしてもあります。この装置によって少しでもそのストレスが軽減され、その分子どもの体調など違うところに傾注できるのはありがたいです」と明るく語ってくれました。
無事、送迎バスに装置が装着され、動作確認が終了すると、子ども達はさっそくバスに乗り込み、帰宅の途に着きました。
全国に4万4000台あるという園バス。まだリリースがアップされたばかりですが、早くもいくつかの園から問い合わせがあると言います。年内には、安全装置のガイドラインが発表され、来年春以降は園バスには設置が義務付けられる方向とのこと、早く多くの園に行き届き、2度と悲惨な事故が起こりませんように祈らずにはおられません。(ココフル編集部)