提供:白泉社 MOE絵本屋さん大賞
全国の絵本屋さん、書店の絵本担当者3000人の投票で「今、もっともおすすめしたい絵本」を選出した「第17回MOE絵本屋さん大賞2024」の贈賞式が、2025年1月30日(木)に都内で開催され、ココフル編集部も取材に行ってきました!
目次
“絵本のある暮らし”を提案する白泉社の雑誌『MOE』が主催している絵本屋さん大賞。開会のあいさつに登壇した白泉社の高木 靖文社長は、昨年11月に代表取締役社長に就任したばかりとのこと。「緊張して話すことを忘れてしまった。これが本当の大ピンチ」と1位に輝いた絵本『大ピンチずかん2』にかけて会場の笑いを誘うと、「自分自身はずっとコミックの仕事をしてきましたが、子育てを通して自社の絵本や、他社様の絵本をたくさん読みました。これからも愛される絵本を作っていきたい」と抱負を語りました。
それでは、笑いあり感動の涙ありのコメントとともに、「今、もっともおすすめしたい!」と選ばれた絵本トップ10をご紹介していきます。
『大ピンチずかん2』(鈴木のりたけ/作 小学館)
全国の絵本屋さん、書店の絵本担当者さんが選ぶ「今、もっともおすすめしたい絵本」1位は、前々回の絵本屋さん大賞で第1位となった『大ピンチずかん』の続編です。
今回は、新採用の「大ピンチグラフ」で6つの理由から大ピンチを分析、解明しています。
【ベストレビュアー賞】絵本屋さん推薦コメント
子どもも大人も、かつて、いや、今でもたまに経験しているであろうピンチの数々。ネガティブな気持ちに苛まれても、そっと心によりそって笑いにかえてくれるチャンスの一歩。ほんのちょっとの心のもちようで人生や毎日を楽しくしてくれる一冊です。(蔦屋書店 高梁市図書館 中塚育子)
鈴木のりたけさん 提供:白泉社 MOE絵本屋さん大賞
「ピンチって萎縮してしまいがちだけれど、人の性格とか、人となりがすごく出てきて、とてもキュートな瞬間が生まれる。それを見つめて、ピンチを前に進む精神力に変えて行けたらいいなと思っています」と鈴木のりたけさん。
『わすれていいから』(大森裕子/作 KADOKAWA)
2位の『わすれていいから』は、赤ちゃんのときから一緒に育った猫と少年の物語。
「長男が小学校4年生くらいのときに、暗い顔をして学校から帰ってきたことがありました。どうした?と聞いてもうつむいて答えない。今は何を言ってもダメかなと見守っていたら、猫がそばに行って、そっと息子の涙をなめたんです。その長男が大学生になって家を離れたことをきっかけに、この絵本がうまれました。会えなくてもいつも側にいる、一緒にいる。そんな関係があると思っています」と大森裕子さん。
【ベストレビュアー賞】絵本屋さん推薦コメント
「今」ある幸せに気づける絵本。もっともっと身近な事に目を向けて大切にしたい。(Book Yard. CHAPTER 3 & COMO 森安知里)
『シカしかいない』(キューライス/作 白泉社)
3位はシカで埋め尽くされたシュールな一冊。
作者のキューライスさんによると、めくってもめくってもシカのお尻が出てくる「鹿ケツカレンダー」という鹿グッズを眺めているときにふと「シカしかいない」というフレーズが降ってきたのだそう。
【ベストレビュアー賞】絵本屋さん推薦コメント
シカ、シカ、シカ!どのページもシカだらけ。シュールでイケてるシカ達。ペロリ!!いろいろなページにこっそり登場する小さなシカも。よーく見ると、違う動物たちも隠れていて、探し絵としても楽しい。なにより奈良人としてはたまらない『シカしかいない』絵本。子どもも大人も笑顔になること間違いなしの絵本!(奈良 蔦屋書店 田畑陽子)
『いちごりら』(麻生かづこ/作 かねこまき/絵 ポプラ社)
「わたしはいちごが大好きで、いちごの季節になるといちごばかり食べています。こんなに食べたらいちごになっちゃうよ!と思いついたのが『いちごりら』です。かねこまきさんがとてもインパクトのある絵を描いてくださり、デザイナーさんがかっこよくデザインしてくださり、編集さんがすてきに仕上げてくださり、絵本は本当にチーム力だなと感じました」と麻生かづこさん。
「シュールな作品を描いているので、変な人と思われがちですが、私自身はいたって真面目な人間。ギャグとユーモアの違いとは?と考えながら描き続けています。いつかその核心にたどりつきたい」とかねこまきさん。
【ベストレビュアー賞】絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
寝る前の読み聞かせの一冊めに選びたい。ゴリラがいちごを食べていちごりら。ではうさぎがぶどうを食べたら?……オリジナルの言葉遊びをしながらお布団で過ごす時間が楽しくなるね。(くまざわ書店 さぎ沼店 臼崎雅美)
『ちょっぴりながもち するそうです』(ヨシタケシンスケ/作 白泉社)
5位はちょっぴり心が軽くなる、ヨシタケ流・創作おまじない集です。
「いいかげんなことが言いにくい世の中になってきているなあと感じています。人を不幸せにする嘘はいけませんが、世の中には人を幸せにする、楽しませる嘘もあります。創作というのはまさにそのいい嘘で、自分がそこに関われていることがうれしい」とヨシタケシンスケさん。
【ベストレビュアー賞】絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
どうしてヨシタケシンスケさんの絵本はこうも心のこりを柔らかくもみほぐしてくれるんだろう……。(ブックセンタークエスト 門司大里店 谷静江)
『トドにおとどけ』(大塚健太/作 かのうかりん/絵 パイ インターナショナル)
6位の『トドにおとどけ』はかけことばが楽しい絵本。
「家族や友人には受賞の報告をして、すごく喜んでくれたのですが、肝心の本人にはまだ報告ができていませんでした。近々水族館にいって、トドにお礼を言いたい」と大塚健太さん。
「MOEは小さなころから読んでいた大好きな雑誌。海獣たちが住んでいる場所などを想像しながら、楽しく描きました」とかのうかりんさん。
絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
アザラシ、セイウチ、アシカ、オットセイ、トド、ちがいのわかりにくい生きものたちもこの本を読めばばっちりわかるようになります。(中略)さがし求めていたトドにやっとたどりついた!と思ったら、そのあとオチが2つあるところも最高です。
(TSUTAYA レイクタウン 海保千年)
『火の鳥 いのちの物語』(手塚治虫/原作 鈴木まもる/文・絵 金の星社)
7位は、手塚治虫先生の普及の名作『火の鳥』を子どもたちにわかりやすく表現した絵本。原作のテーマの核となる「命の尊さ」に着目し、原作を読んでいても、読んでいなくても楽しめる一冊です。
「絵本は、世界の入り口になるものだと思っています。お母さんのお腹のなかは安全な場所だから、お腹から出てくると、赤ちゃんは不安なんです。ひざに乗せてお腹の近くで、これは車だよ、ぞうさんだよと絵本を読んであげることで、生きる基本ができていきます」とホワイトボードに絵を描きながら説明してくださった鈴木まもるさん。
「絵本を通して、世界は広くておもしろいよと伝えていきたい」と話す鈴木さんは、鳥の巣研究家でもあり、世界中をまわり活躍なさっています。
絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
「あなたはあなたのままでいい」と心に寄り添ってくれる壮大な一冊です。(明屋書店 今治本店 越智美弥子)
『おすしが あるひ たびにでた』(田中達也/作 白泉社)
「まきず市」駅から旅に出たおすし。「あげあげビーチ」で気分上々、「ゆきのくに」ではスノボを楽しみ、「おかしなさばく」で宝探し!
だじゃれを盛り込んだ、見立てのおもしろさ満載の一冊。
絵本屋さん推薦コメント
田中達也さんの空想力、アイディアに脱帽。こり固まった物の見方をしていると何事も楽しめないぞ!と教えてくれる絵本です。(明屋書店 臼杵野田店 泉亮子)
『パンダのおさじと ふりかけパンダ』(柴田ケイコ/作 ポプラ社)
スーパーマーケットの試食販売のおじさんにもらった「ふりかけパンダ」をかけたら、あら不思議!嫌いなごはんがかわいくなって、食欲もりもり。でも使い方を間違えると……。
絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
お子さんの好き嫌いに悩んでいるお母さんたちにお子さんと一緒に読んで欲しい絵本。(いけだ書店 大口店 尾上暁子)
『そそそそ』(たなかひかる/作 ポプラ社)
「ぷるぷる」から「ぐにゃり」、そして「にゅーん!」。動物たちの予測不能な動きは何度読んでも衝撃。見て、聞いて、自分流に声に出して、絵本の面白さをとことん味わえる一冊。
絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
たなかひかる先生のシュールさがこれでもかと詰め込まれていて最高。(紀伊国屋書店 佐賀店 西山成子)
やんちゃなくまたはママに叱られてばかり。なんとかママを驚かせ、感心されたくて仕掛ける作戦は、ダンゴムシやセミのぬけがら、自分の好きなものてんこ盛り。さてママは……?
絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
まったく動じないママが、くまたに「さすが」と言われる場面が本当にほほえましく、きゅんとしました。(喜久屋書店 草津店 黄瀬)
『ぎょうざが いなくなり さがしています』(玉田美知子/作 講談社)
お店から突然いなくなったぎょうざは、今頃どこに?
絵本屋さん推薦コメント
餃子がいなくなりました、の町内放送だけでもう面白い。そこから始まるとしおくんの妄想の飛躍がさらに面白い。餃子はなぜいなくなり、どこへいったのか。ラストまでずっと楽しい。ぎょうざが食べたくなるお話です。(くまざわ書店 西新井店 塩里依子)
『きらきら ぴかぴか どうぶつ だいすき』(瀧靖之/監修 あかいしゆみ/絵 朝日新聞出版)
きらきらの全面ホログラムに、にこにこの動物たち。光るものが大好きな赤ちゃんの目をとらえて、脳の発達をうながします。
【ベストレビュアー賞】絵本屋さん推薦コメント ※一部を抜粋
売り場に積んでいるだけで、本当に「きらきらぴかぴか」光っていて目立ちます!この「きらきら感」が赤ちゃんたちから大人気の秘密かも。(丸善 京都本店 辻下佳美)
以上、「第17回MOE絵本屋さん大賞2024」に選ばれた作品を一挙にご紹介しました!
贈賞式にはベストレビュアー賞に選ばれた書店員の方々も登壇し、絵本の作り手と売り手、読者がひとつになるような心あたたまるお式でした。
現在発売中の雑誌MOE 2月号では、「第17回MOE絵本屋さん大賞2024」を大特集。今回ご紹介しきれなかった受賞コメンや推薦コメントなどがたっぷりと掲載されています。
「MOE2025年2月号」
発売から何十年というベストセラ―も多い絵本ですが、毎年発売される新しい絵本のなかも、これから長く読み継がれていく名作がたくさんありそうですね。(取材・文/山見美穂子)