Cocoful ココフル

  • 友だち追加

イベント・企画

福岡伸一氏と一緒に学ぶ「いのちをつなぐ特別授業」

2024.05.17

気候変動や環境破壊。私たちの周りの環境は日々悪い方向へ進んでいるように思えます。特に子どもを持つようになると、地球の未来に思いを致さずにはいられません。

日本全国の子どもたちに、生命科学や衛生・環境・健康をテーマにした学びの機会を提供する教育支援プロジェクト「いのちをつなぐ学校 by SARAYA」が、開校3年目を迎えて特別授業が行われると聞き、ココフル編集部がさっそく行ってきました。

「いのちをつなぐ学校 by SARAYA」で命について考えよう

「いのちをつなぐ学校 by SARAYA」は生命についての理解や、感染症の知識を伝える教育支援プロジェクトです。日本を代表する生物学者でもある福岡伸一氏による動画コンテンツや、社員による全国の学校(小・中・高等学校)への出張授業を通して、「いのちをみらいにつなぐための学び」を、提供しています。

オープニングでは、「いのちをつなぐ学校」のコンセプトやサイトが紹介されました。毎月更新される動画ライブラリーには知的好奇心を刺激される多くのコンテンツがあります。授業や自習で活用されているとのことですが、2分程度で幼児でも見やすいので、ぜひ皆さんも興味のあるところからお子さんとご覧になってはいかがでしょうか。

https://connecting-lives-school.jp/library/movie/

今回はフクオカハカセこと福岡伸一氏が初めて画面を飛び出し、生命哲学、生命科学の観点から“いのち”についてわかりやすくお話をしてくれました。

生命とはなんだろう?

まずは、この日会場となった「新渡戸文化学園」の高校生たちが登壇し、「体にいいモノとは何か」「なぜ実験動物はチンパンジーではなくマウスなのか」「生命とはいったい何か」といった自分たちが疑問に思ったことを企画にして発表。それぞれの考えを述べたり、自分たちの「センスオブワンダー体験」を発表したりしました。

「センスオブワンダー」とはレイチェル・カーソンの著書でも有名な言葉ですが、直訳すると「自然に対する驚き」です。小さいころは、アリの行列を見たり花のつぼみが花開いただけでも驚いた経験はだれしもあるのに、大人になると驚くことすら忘れてしまいます。子どもの感性は、大切にはぐくみたいものですね。

「なぜ実験動物は、チンパンジーではなくネズミなのか」

 

活発に意見を述べた高校生たち

フクオカハカセのセンスオブワンダー

次は、大人になってもその感性を忘れず、日々努力を重ねている福岡氏の登壇です。

福岡伸一氏

福岡氏が、幼少期から現在までの経験に基づいて少しずつ「生命とは何か」という解に近づいて行った話がとても深く、面白いものでした。人より虫が好きだった福岡少年は、虫、顕微鏡、微生物と次第に興味の対象を広げつつ「生命」について研究を続けます。ご自身のことを「単なるオタク」と言い、「問いを問い続けること。好きなものを好きであり続けること」が大切なのだとメッセージを送ってくれました。

人は昔、生き物には霊が宿ると信じていました。神の力により生命が与えられているといった考え方です。けれどもそうではなく、生命自体が努力し、自らを壊しながら作り変えているけなげな営みこそが「生命」なのだと、とつとつと語る福岡氏の話は壮大で神秘的で感動的でした。

自らを壊し続けて作り替えていくことをイメージ化したイラストレーション

高校生たちも大いに触発されたのではないでしょうか。

なぜ、勉強をしなければいけないか

高校生たちからは、鋭い質問がたくさん出されましたが、なぜ勉強をしなければいけないかという質問もありました。それに対して福岡氏は「勉強はあなたを自由にしてくれます。勉強をしないと紛らわしい知識やおかしい制度にがんじがらめになってしまいます。それをひとつひとつ解いていくのが勉強です。そのことで視野が広がります。つまり自由への闘争が勉強なのです」と語りました。

また昨今話題の多いAIについて、AIが人間の知識を超えてしまったらどうなるのだろうかという質問には、「AIは知識の履歴から答えることができます。人間だけにできることは履歴がなくても生み出せること。最初の一手をうつことができるのです。破壊をしながら新しいものを生み出すのが人間なのです」と答えます。

どんな質問にも、真摯にそしてずばりと核心をついた答えを導き出す福岡氏に、会場からはほおっとため息が漏れていました。

ボルネオ学習ツアーの告知

最後に、夏に企画されるボルネオ学習ツアーの告知がありました。(ボルネオツアー応募対象は、中高生のみ)

https://connecting-lives-school.jp/event/20240511-1612/

ボルネオ島はもともと熱帯雨林の島でしたが、サバ州においては現在熱帯雨林は50%以下となっており問題となっています。その大きな原因は油ヤシ農園への転換です。私たちも日常的に使っている「パーム油」はこの油ヤシから作られます。しかし油ヤシ農園は、マレーシアの経済発展に役立っており、一概に油ヤシ農園の開発を否定できない部分が問題をむずかしくさせています。

このツアーでは、ボルネオの森林に生息する希少な野生動物や昆虫と出会って生物多様性の大切さを学んだり、パーム油(アブラヤシ)のプランテーション(農園)を見学したりするなど、環境・社会の“SDGsの最前線”を、福岡氏とともに体感できるとのことです。福岡氏もボルネオ島に行ったことがないということで、子どもたちといくツアーを今からワクワク楽しみにされている様子が見て取れました。

人の命から地球の命まで、幅広く、より深く学べた時間となりました。(取材・文/ココフル編集部)

福岡伸一氏プロフィール

生物学者。1959年生まれ。京都大学卒。青山学院大学教授。米国ロックフェラー大学客員研究者。サントリー学芸賞を受賞。『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的均衡』(木楽舎)など“生命とは何か”をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『福岡伸一、西田哲学を読む 声明をめぐる思索の旅』(小学館新書)、『迷走生活の方法』(文芸春秋)、訳書に『ドリトル先生航海記』(新潮文庫)、『ガラパゴス』(講談社)など多数。

株式会社サラヤ

衛生状態が悪かった戦後、日本で「赤痢」が流行したときに「誰もが等しく病気の脅威から逃れられる手段を」との思いから感染症対策のために殺菌・消毒ができる液体石鹸と容器を開発。その後「手洗いで世界に貢献しよう」という思いで2010年からはユニセフと共に、アフリカ・ウガンダでの手洗い設備と習慣普及を目指した「100万人の手洗いプロジェクト」を行う。

「いのちをつなぐ学校  by SARAYA」を2022年4月に開始。自社製品の原料の一つである「パーム油」の生産地ボルネオで生物多様性の保護と環境保護活動を行う。また、ヤシノミ洗剤など対象商品の売り上げ1%(メーカー出荷額)をボルネオの環境保全や野生動物の保護活動に寄付している。

基本情報

名称生物学者・福岡伸一氏と一緒に学ぶ「いのちをつなぐ特別授業」
主催

いのちをつなぐ学校(サラヤ株式会社)

共催・協力

共催:学校法人 新渡戸文化学園
協力:一般社団法人シンク・ジ・アース

 

WEBhttps://connecting-lives-school.jp/
開催日時2024年5月11日(土) 13:30~16:00
開催場所新渡戸文化学園ハピネスホール
住所東京都中野区本町6-38-1 地図を見る
この記事が気になったら
シェアしよう