
秋から冬にかけて、インフルエンザが大流行の兆し。免疫力アップにはどうしたらよいのか気になっていたところ、免疫対策についてのセミナーがあると聞き、さっそく行ってきました。
本セミナーは「にごり酢の日特別セミナー」として2025年11月6日東条記念館にて開催され、免疫対策と酢酸菌の健康効果について複数の専門家が講演を行いました。
目次
まず登壇したのは、石原新菜先生。
石原先生は、今年の感染症流行が例年より早く、インフルエンザや百日咳、マイコプラズマ感染症などが同時に流行している状況を説明しました。

石原新菜先生
免疫対策としては、手洗いうがいをするとか睡眠をしっかりとるといった対策がまず頭に浮かびますね。その中に発酵食品を取るという選択肢もあります。すでに納豆やヨーグルトを食べて実践している方も多いでしょう。
ビフィズス菌や納豆菌といった発酵食品は、なぜ免疫によいのでしょうか。
私たちの身体の中にあるTLR(トル様受容体)は、異物が入ってくるとウイルスや菌を認識して、必要な免疫応答を起こします。免疫細胞が活性化し、身体が感染症と戦う準備が整います。
TLRは、鍵穴のようなもの。それぞれ違うカギを持つ乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌はいくらそれ自体が免疫対策に効果的でも、体内で認識してもらわないことには免疫細胞が活性化しません。
乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌は、TLR2という免疫スイッチを押せる菌ですが、TLR2とTLR4という2つの免疫スイッチを押せる菌が酢酸菌です。酢酸菌は2つのTLRを刺激することで、免疫細胞が2倍以上活性化するとのことです。さらに酢酸菌と乳酸菌や、酢酸菌と納豆菌など併用することで、単体で摂取する余地も倍以上の免疫細胞活性も確認されているということです。

次に登壇したのはキユーピー株式会社の奥山洋平氏です。

キユーピー株式会社奥山洋平氏
奥山氏は、研究者の視点から酢酸菌の可能性について解説しました。酢酸菌の細胞壁に含まれる糖脂質が免疫細胞に働きかけ、TLR4とTLR2の両方を刺激することで、花粉症、疲労・倦怠感、感染症、肌のムズムズ対策などに効果があることを臨床研究で確認したと報告しました。
酢酸菌は、にごり酢に含まれています。にごり酢とはお酢の発酵に必要な酢酸菌をろ過せずにそのまま残したお酢のことです。

奥山氏は、酢酸菌が入った濁った状態のお酢が本来は栄養価が高いにもかかわらず、透明なお酢が好まれるようになり、酢酸菌が捨てられてきた歴史についても言及しました。もったいないですね。

岸紅子さん
岸紅子氏は、自身の体験を交えながら、発酵食品と酢酸菌の重要性について語りました。現在ウェルネスプロデューサーとして活動されている岸氏ですが、そのきっかけは、20代で体を壊した経験や、重度のアトピーとアナフィラキシーを持つ子どもの健康を考える中で、発酵食品の研究を始めたことだったそうです。
その中で、濁ったお酢に有用な菌が含まれていることを知り、その価値を再認識。また、お酢の蔵元が減少している現状に触れ、伝統的な製法で作られる発酵食品を継承していくことの重要性を強く感じているとのことです。
岸氏は最後に、ウェルネスを楽しむ3つのすすめとして、(1)誰がどのように作っているのかを知ること、(2)作り手のこだわりを知ること、(3)自分との繋がりに気づくことの3点を挙げ、食品の生産者の思いや製法へのこだわりを知ることで、食生活がより豊かになると語りました。
最後に、にごり酢を製造する3つの蔵元(庄分酢、とば屋酢店、タマノイ酢)の代表者によるトークセッションが行われました。

まずは各蔵元がにごり酢の開発背景やこだわりについて語りました。
庄分酢の15代目高橋清太朗氏は300年前からの製法を受け継ぎ、蔵でしか味わえなかった濁った状態のお酢を商品化したとのことです。とば屋酢店の13代目中野貴之氏は、本来栄養価の高い酢酸菌を含む濁りを、製造過程で取り除いていたことに疑問を持ち、にごり酢の開発に至ったと述べました。タマノイ酢の谷尻真治氏は、ヨーロッパから輸入した有機リンゴ酢を日本で紹介する取り組みについて説明しました。

セミナーの最後には、11月25日の「にごり酢の日」に開催される「第1回にごり酢祭り」の紹介や、全国の銭湯で展開される「にごり湯×にごり酢」企画についての案内がありました。蔵元同士が垣根を越えて手を取り合い、にごり酢文化を全国に広げていく動きが本格的に始まっています。登壇者全員による鏡開きが行われて、「酢酸菌を文化へ」という目標に向かって気持ちがひとつになった瞬間となりました。

セミナー終了後には、にごり酢を使った料理の試食も提供されました。
にごり酢入りキーマカレー、千葉県産イサキのにごり酢締め にごりリンゴ酢のクラッシュゼリーとヨーグルトムースといったメニュー。カレーにお酢?と思いましたが、まったく違和感はなく、他の試食も合わせてまろやかな味でとてもおいしくいただきました。

かつては食べられていたにもかかわらず、その後濁っているというだけで捨てられるようになったお酢の発酵菌が、実は「攻めの発酵菌」であるということがわかったということ。蔵元同士が垣根を越えて手を取り合い、にごり酢文化を全国に広げていく動きが本格的に始まっていることなども合わせて、大変興味深いセミナーとなりました。
石原新菜氏(イシハラクリニック 副院長)

2006 年帝京大学医学部卒業。同大学病院で 2 年間の研修医を経て、現在は父・石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。 主な著書「おいしくて体に効くお酢レシピ(扶桑社)」他多数。
主な所属学会:日本内科学会、日本東洋医学会
岸 紅子さん
(ウェルネスプロデューサー/NPO法人日本ホリスティックビューティ協会代表理事)

自身や家族の闘病経験をもとに、2006 年に NPO 法人日本ホリスティックビューティ協会(HBA)を設立(代表理事)。多数の美容・健康・医療関係者とともに女性の心と体のセルフケアの普及につとめ、資格検定や人材育成を行う。また、環境アクティビストとして環境省「つなげよう、支えよう森里川海」アンバサダーやサステナブルコスメアワード審査員長なども務める。

奧山 洋平さん(キユーピー株式会社)
高橋 清太朗さん(株式会社庄分酢)
中野 貴之さん(株式会社とば屋酢店)
谷尻 真治さん(タマノイ酢株式会社)
| 名称 | 免疫スイッチ「TLR」に注目 酢酸菌が拓く“この冬の免疫対策” |
|---|---|
| WEB | https://sakusankin-life.jp/ |
| 開催日時 | 2025年11月6日(木) |