「ニッポンの家族の未来と暮らしがより豊かになるように」という願いを込めて、4月27日(水)に横浜・大さん橋ホールで開催されたファミリーイベント「JAPAN FAMILY FESTIVAL」。
■ママの“はたらく”“くらす”“つながる”を考える
そのステージにおいて、子育て期の多様な働き方を紹介するトークセッションが行われました。
テーマは「これからのこどもの未来のためママができること。~はたらく、暮らす、つながる~」。
実際のママの声を拾いながら、現在も多くのママと向かい合う様々な団体の方々による意見交換会です。
ファシリテーターは、ママのはたらくインフォメーション/Creative Living LABの阿部麗香さん。
ゲストは大変多彩な顔ぶれです。
▲日本財団でママプロ(ママの笑顔を増やすプロジェクト)を進める森啓子さん
▲NPO法人チルドリン代表理事である蒲生美智代さん
▲株式会社AsMama代表取締役CEO甲田恵子さん
▲株式会社コッコト代表取締役・
Power Womenプロジェクト代表を務める宮本直美さん
▲フリーランスママによる企画・制作チーム
「マムズラボ」の佐藤にのさん
▲JAPAN FAMILY PROJECTから千葉祐大さん
この豪華なメンバーで“はたらく”“暮らす”“つながる”について、
それぞれの立場からの提案を行いました。
■子育てママを取り巻く現状とは
望む働き方や理想のライフスタイルは人それぞれ。一方で、現在の子育てママを取り巻く環境や社会は、どのような状況なのでしょうか。
ママイベントのパイオニアともいえるNPO法人チルドリンの蒲生さんは、活動スタートのきっかけを「地域のつながり作り」だといいます。
「立場や趣味嗜好をこえて、地域のママ達が知り合い、情報共有できる場を作りたいと思いました」。
そんなママ同士のつながりを社会インフラにしたいと語るのは、株式会社AsMamaの甲田さん。AsMamaでは、地域の顔見知り同士で子どもの送迎や託児を頼り合う「子育てシェア」を実施し、「つながりが子どもにとってのセーフティネットにもなる」と話します。
また、株式会社コッコトの宮本さんからは、ご自身の就職活動時のエピソードが。「生後7ヶ月の子どもを抱えての就職活動は、何十社も応募したものの結果は全滅。そこで、子育てをしながら自分も楽しめる働き方を模索し、在宅で働ける会社を立ち上げました」。
全国のフリーランスママ達による事業ネットワークを運営するマムズラボの佐藤さんも、「時間や場所に縛られず、一人ひとりがやりがいを持って働けるのが自営型テレワークです」と続けます。ディレクター、ライター、デザイナーなど、クリエイティブなスキルを持つママ達とチームとしてつながり、東京に集中しがちな仕事を在宅で受託することが可能になりました。
参加者の中で唯一のパパであるJAPAN FAMILY PROJECTの千葉さんは、お子さんの誕生後、育児休暇を取得。「子育ての大変さを身をもって知りました。1人ではできないことも多いので、まずは一番身近な存在である家族がつながることが大切」と話します。
「子どもの預け先がなくて仕事探しができない」など、ママ達のリアルな声を紹介してくれたのは、日本財団の森さん。日本財団「ママプロ」では、ママのニーズを調査する「ポストツリー」プロジェクトを通して、これまで1万3千以上のママの声を集めてきました。
1人で力が及ばないことは、パパや実家、地域のママたち、そして「子育て中でない人たちももっと巻き込んでいってほしい」と呼びかけます。
■つながり作りで地域の助け合いを
ママの働き方やくらしを考える上で重要な意味を持つ、“つながる”というキーワード。
甲田さんは、「ママ同士の頼り合いが、子どもの自己肯定感を育てることにもなる」と話します。
「何でも自分で抱え込む大人を見て、子どもは『人を頼るのは格好悪いことだ』と思ってしまう。困ったときに『助けて』といえる、困っている人には手を差し伸べる、そんな姿を子ども達に見せるべきなのではないでしょうか」。
「頼りたい、手伝いたいと思っても、日本には摩擦を起こさないことを良しとする風潮がありますよね」という蒲生さんに続き、「一昔前なら隣近所で声をかけ合うことは当たり前。地域のつながりとは、新しくもあり、少し昔に戻ることでもあります」と宮本さん。「コミュニケーションをとることが助け合いになる(千葉さん)」「思いは言葉にしないと伝わらない(佐藤さん)」と、“つながる”を形にするために次々と意見が出されます。
また、森さんからは「ベランダ菜園や貸農園で、野菜を育ててみては」との提案が。現在、子どもから危険を取り除きたいと思うあまりチャンスまで奪ってしまう、過保護や過干渉が一部で問題になっています。「自分で農作物を育てると、その生命力の強さにきっと驚くはず。“食”からのアプローチで得るものも大きいのではないでしょうか」。
■ママ達へのメッセージ。理想の実現のために必要なこととは?
一人ひとりの考えやライフスタイル、育児環境に合った働き方を創出するために、必要なこととは一体何でしょう。
「自分自身も地域の一員であると、もっと意識してもらいたいと思います」(蒲生さん)
「やりたいことに対し胸を張って欲張ってほしい。応援してくれる人を見つけるために、SNSなどを活用してみては」(甲田さん)
「ママは自分より子どもや家族を優先しがち。子育てを楽しみながらも、自分の幸せを一番に考えてほしいと思います」(宮本さん)
「まずは自分のしたいことをきちんと口に出すこと。そして、『できる』と自分を信じてあげてください」(佐藤さん)
「理想の人生について夫婦、家族で話し合って。1人ではできないことも助け合えるようになると思います」(千葉さん)
「大切なのは自分に自信を持つこと、自分がいなくても子どもがきちんと生きていけるように環境を整えること。他人の評価を気にする必要はありませんよ」(森さん)
■熊本地震によせて――今できる防災対策を
今年4月に起こった「平成28年熊本地震」。被災地の方々に向け、各団体では様々な支援活動を行っています。
当日、会場では、被災地支援のための募金箱を設置。NPO法人チルドリンでは必要な品や子どもの絵本などを被災地へ届ける「ママのラブバッグプロジェクト」を、株式会社コッコトでは被災地への応援メッセージ数に応じた金額の寄付活動を実施しています。
佐藤さんが代表理事を務める一般社団法人Stand for mothersでは、東日本大震災の体験者の声をまとめた「防災ママブック」をサイト上で一般公開。日本財団の森さんからは、助成金をはじめとする緊急支援の取り組みが紹介されました。
寄付などの支援に加え、「地域の頼り合いで防災・防犯を」と語るのは甲田さんです。「子育てシェア」をはじめとする地域のネットワークを構築し、「大きな災害が起こったときに孤立する人が誰もいないようにしたい」と訴えました。
トークセッションを終え、ファシリテーターの阿部さんは「つながること、そして自分の思いを発信することが、ママの働き方を考える上で大きな意味を持つのですね」とまとめます。
「働きたい」「社会と接点を持ちたい」というママの思いに大きく関わる“つながる”ということ。家族や地域の“つながり”を作ることが、ママ自身や子どもの未来のためにもなる――。そんな気づきが生まれるトークセッションとなりました。(文:加藤朋実)