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カルチャー

【伝統】新富座こども歌舞伎の楽しみ方 その2 

2014.05.29

人気作品が目白押し!

3年前から登場した『義経千本桜』は、源平合戦後の義経の都落ちの物語。
こども歌舞伎で上演するのは「吉野山(道行初音旅)」の場面で、
義経を追って初音の鼓と共に吉野に向かう静御前と、
鼓になってしまった親狐を慕い忠信に化けて静御前に付き添う源九郎狐の旅が描かれます。静にちょっかいを出そうとする悪役(というか三枚目役)の藤太の
コミカルな役柄も魅力的。

DSC_4662
▲藤太のユーモラスな顔と演技

美しい静御前の舞、端々に「狐」の正体が見え隠れしながらも
静を守りお供をする忠信の奮闘、衣装の早変わりなど、
見どころ満載の演目です。

そして何と言っても壮観なのは、
五人男が傘をさしズラリと並んで名台詞を披露していく『白浪五人男 稲瀬川勢揃いの場』。実はこの男たち、“盗みはすれど非道はせず”な義賊(金持ちから奪い貧しい人に分け与える)というカッコイイ泥棒たち!
捕り手に追い詰められて居直り、
「さぁ捕まえてみろ」と開き直って自己紹介をするという面白い場面です。
石川五右衛門がモデルとされる日本駄右衛門をリーダーに、
弁天小僧菊之助、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸の個性豊かなこどもたちが、
傘を片手に七五調の名台詞を朗々と読み上げます。
一人一人が見得を切る場面では「よっ待ってました!」と会場から声もかかり、
一番盛り上がるのもこの演目。それぞれ違う模様をあしらった衣装も見どころです。

goninotoko(c)焼田健
▲追ってきた捕り手もやっつけて、キリリと見得を切る見せ場。

そして忘れちゃならない、裃をキリリと身につけた口上は、
演目が始まる前のご挨拶。
「東西・東西(とざい・とうざぁーーーい)」の声を皮切りに、
これからお見せするお芝居をあざやかな口調で紹介していきます。
小さな身体から張った声で「お目まだるきところは幾重にもご容赦のほど」
「隅から隅までずずずいーっと、乞い願いあーげ奉りまする」なんて言われると、
こちらまで背筋がピンと伸びるような気持ちになります。

koujyou(c)焼田健
▲ こども歌舞伎のはじまりはじまり~♪

鳴り物やお囃子は、近所の人やOB・OGが参加

次はちょっと舞台から目を外し、
♪ツントンシャン♪テケテケテン♪と音を出している人たちにもご注目!
実は三味線は近所のおじさん・おばさん連中。
鳴り物は出演者の親やOB・OGたちで演奏を担当しているのです。
もちろんプロのお師匠さまの指導のもと、
お稽古にお稽古を重ねた素人衆がこどもたちの演技に花を添えています。
メイクはプロのアーティストによるものですが、
同じ役柄でもそれぞれのこどもの顔かたちによってメイクを変えるという芸の細かさです。

ohayashi(c)焼田健
▲今年は鼓と三味線にこども歌舞伎OB・OGが出演してくれました。

最初から最後まで見どころ尽くしのような新富座こども歌舞伎。
小さな身体を華麗な衣装で包み愛らしい仕草や澱みない台詞を披露できるのも、
子どもたちが日々重ねている努力の賜物です。
お稽古では自分で浴衣を着て、終われば三つ指をついてご挨拶をする、
基本的な作法や礼儀もしっかり身に付きます。
「拍手をもらえると嬉しい」「お稽古も準備も大変だけど、舞台に出ると忘れちゃう」と嬉しそうに話す子どもたちですが、
舞台が終わってメイクを落とせば追っかけっこやゲームに夢中になる普通の小学生。
その変身ぶりを見るにつけ、小さなプロ魂を見せられているような気がします。

teppouzu(c)焼田健
▲ 公演当日は押すな押すなの大盛況!

新富町という歌舞伎に縁の深い街に生まれ、
地元の人々に愛される「新富座こども歌舞伎」。
興味を持った方は是非足をお運びくださいまし。
きっと想像している以上に、凛々しく背筋の通った子ども役者たちに出会えることでしょう。

(取材・文:元井朋子、写真:焼田健)

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