みなさんは、リウマチという病気を知っていますか?
「お年寄りがなる病気」「完治しない」といったイメージがありませんか?
実は、リウマチほど正しい情報が知られていない病気もないとか。
ココフル読者に決して無関係ではない、「リウマチ」について、講演会でお話を伺ってきました。
講演をしてくださったのは、医学博士湯川宗之助氏です。
湯川宗之助氏 プロフィール
1978年生まれ。2000年東京医科大学医学部卒。2015年湯川リウマチ内科クリニック開業。日本リウマチ学会リウマチ専門医。4歳児の父。
この講演会は、「ダヴィンチマスターズ」というイベントの企画の一環。講演会の参加者は、1年生から4年生の子どもを持つ保護者が多かったため、「医療と教育というのは、きわめて類似性が高い」というテーマでお話は始まりました。
「医療は、患者さんにとっての希望であり未来である。小さい子を持つということは両親にとって、希望であり未来である。社会にとってもまた希望であり未来であること」と語る湯川先生の話に、保護者達は熱心に耳を傾けていました。
▲会場は熱心な保護者でいっぱい!
◆関節リウマチ発症は40代が一番多い!
その後、湯川先生の専門領域である「関節リウマチ」について話が進みました。
リウマチと聞くと「高齢者の病気」とか「温泉で湯治」「完治しない」「神経痛・痛風」というイメージがありませんか?
実は、発症年齢は40代が一番多く、次いで50代、30代と続きます。40代で24.7%、50代は23.7%、30代は19.3%だそうです。しかも男女比は1:4と聞けば、ココフル世代のママたちも無視はできませんね!
30代40代といった働き盛りで発症すれば、仕事に子育てに、影響は多大です。
▲40代の発症が一番多いが、10歳未満でも発症する
◆初期症状は、見逃されがち
肩のこわばり、どことなく気分がすぐれない、体がだるい、微熱が続く、食欲の低下などがリウマチの初期症状。一般的によく起こりがちな症状ですね。
病気とは言えない「未病」に初期症状が一致してしまっているため、まさかリウマチとは思わずにやりすごし、いつの間にか重症化してしまうことも多いそうです。
リウマチは、自己免疫疾患の一種です。自己免疫疾患とはなんでしょうか?
通常は対外からウイルスや細菌などの異物が入ってきたものに対して抗体反応を起こして体内に増殖しないように攻撃します。
自己免疫疾患というのは、対外から入ってきていない自分の体の細胞を異物(自己抗原)と認識して反応してしまい、自己反応性Tリンパ球が攻撃を行ってしまうものです。
その結果炎症が起こり、痛い、腫れるなどの全身の障害や臓器障害を引き起こします。関節だけではなく、目、鼻、肺、心臓、さまざまな臓器に障害をもたらします。
▲リウマチは、関節が痛むだけではなく全身疾患である
◆画期的な新薬ができている
日常生活も十分に過ごせなくなり、長く不治の病とされていたリウマチですが、今から15年前に画期的な新薬ができ、寛解(まったく痛くない、腫れない、日常生活に不便がない)や完治(薬を必要としない)を目指せる病となったそうです。
これはリウマチ治療において画期的な進歩と言えるのですが、それを知らないまま古いやり方でリウマチ治療を続けている医療機関も少なくないということです。
湯川先生はこういった現状を憂いて、医療関係者との勉強会を開いたり、地域社会に情報発信をして、古いリウマチに関する誤解を解く活動を積極的に進めています。
それにしても、医療関係者すら新薬・新治療の存在を知らないとは驚きです。我々は、どうやって専門の知識を持った医療従事者に会うことができるのでしょうか。
先生は、「なんでも医者やネットの情報をうのみにするだけではなく、治療方法などで納得がいかないことがあれば、とことん聞いたり、違う方法がないのか調べたり、他の先生を探したりと、動いてみてください」とおっしゃっていました。これは、リウマチだけにかぎらず、すべてのことに対して言えるかもしれませんね。
◆医療格差・地域格差をなくしたい
湯川先生によれば、リウマチの患者は、日本だけでも80万人、全世界では7500万人いるそうです。
「先進国である日本でリウマチ患者を正しい治療で根絶することは、ひいては世界中のリウマチ患者を救うことにもつながると考えています」と湯川先生。
▲丁寧にお話をされる湯川先生
そのために、まずは日本国内で医療格差や地域格差があってはならないと、日々努力を続けられているとのお話に、多くのパパ・ママたちはじっと聞き入っていました。
▲保護者からは質問も出され、活発な意見交換がされました
45分の講演の後、ココフル読者のために特別にお時間をとっていただきお話を伺いました。
◆妊娠中・授乳中だとどうなるの?
宗像 ココフル読者には、リウマチには縁がないと思っていましたが、実は30代40代の発症が多いんですね!驚きました。
湯川 そうなんですよ。
宗像 ココフル読者は、育児に手いっぱいで自分のことは後手後手になっている人が多いのですが、リウマチになってしまう危険もあるということですね。新薬が発明されて、ずっと治療が楽になったというお話を伺いましたが、薬は妊娠中の方は服用できないのではないでしょうか。
湯川 実は、すでにリウマチに罹っている患者さんでも、妊娠中はリウマチの進行が遅くなると言われています。
宗像 そうなんですか!
湯川 はい。ですから、妊娠中に関してはそれほど心配する必要はありません。その代り、産後は発症したり、妊娠前から発症していた人は悪化すると言われています。
宗像 そうなると授乳中の治療についてはどうなるのか、気になります。
湯川 その場合も、治療法はいろいろとあります。授乳中でも安心して治療を受けてください。
宗像 それを聞いて安心しました。ありがとうございました。
知っているようで、誤解が多い「リウマチ」。正しい知識を知って、正しい治療を受けたいものですね。
今回の講演会は、2018年6月10日に、学習院女子大学で行われたダヴィンチマスターズ第8回の企画の一環で行われたものです。
ダヴィンチマスターズとは、小学校1年生から4年生を対象に、楽しみながら理数分野が好きになる体感イベントを定期的に開催しています。
ダヴィンチマスターズに興味のある方は、こちらをクリック!
http://davincimaster.com/
▲講演会が行われている間、子どもたちは体験プログラムを楽しんでいました!
(取材・文 宗像陽子)