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「幼保無償化」制度で起こること。

2019.10.15

◆幼保無償化制度 施行。その背景

2019年10月より、「幼保無償化」制度が施行されます。
ココフル世代の一番の関心事でもありますね。その背景は何か、幼保無償化制度によってどんなことが起こり、保育現場は何が変わろうとしているのでしょうか。

「少子化 人口減少時代に考える変化する保育の在り方」という講演会に出席してきました。

冒頭、開会あいさつに続き、内閣府参事官南順子氏より「我が国の少子化の現状、および国家主導施策・ベビーテックの重要性」について話がありました。


▲南順子氏

第1次ベビーブームに250万人を超えた出生数は、平成30年の出生数は91万8397人、ついに31年には90万人を割り込み、その現状は「静かなる有事」とまでいわれているわが国の少子化。さまざまな国の施策にもかかわらず、少子化に歯止めはかかりません。

理由としては、子育てや教育にお金がかかりすぎるといった理由がダントツに多く、また高年齢で産むのが嫌、ほしくてもできないといった理由も上位に上がりました。

そこで、子育て世代の教育費負担を減らすことで、どの家庭の子どもも質の高い教育が受けられるようにするために、幼稚園、保育園、認定こども園の教育費を国が補助する制度が実施されることとなり、子育て世代の負担減に大いに期待されています。

ただし、教育費、保育料が全額無料になるわけではありません。何がどう、無償化の対象になるかは、対象施設、対象年齢、条件によって異なりますので、よく調べることが必要です。
内閣府の「うちの子の場合は?」シミュレーターも紹介されました。

内閣府 よくわかる「子ども・子育て支援新制度」
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/sukusuku.html
「うちの子の場合は」シミュレーター
https://www.youhomushouka.go.jp/simulation/

◆幼保無償化によって起こること

幼保無償化が始まり、何が起きるのか、保育はどう変わるべきなのかと言ったテーマについて、ユニファ株式会社の土岐氏をモデレータとして、白梅学園大学大学院の無藤隆特任教授教授と玉川大学の大豆生田啓友教授による対談が行われました。


▲ユニファ株式会社 土岐泰之氏

「幼保無償化になれば、すぐに少子化に歯止めがかかるかといえば、それほど単純なことではない」と無藤教授はいいます。

幼保無償化により、共働き世帯がますます増加し、保育園が増えるでしょう。しかし、保育士の確保がむずかしかったり、さまざまな企業が保育園経営に参入することで、保育の質の低下についても懸念されています。

大豆生田教授も「少子化対策としてだけの無償化だけでは、今後立ち行かない。保育が楽しいと保育士が思えること、支えられていると保護者が感じることが必要で、課題は山積している」といいます。

◆保育の質の低下に陥らないために必要なこと

保育の質の低下についてはどう向き合うべきでしょうか。

それについては、無藤教授は3つの指針をあげています。
1.    最低限のマニュアルをきっちり守ること。
死亡のような重大な保育事故のほとんどが、マニュアルを守っていないことにあります。
2.    保育を勉強できる時間のゆとりができる体制にすること
3.    保育を見直しながら記録を残し、検討をして、より良い保育を求めていくこと


▲無藤隆教授

このほか、行政によるチェック,第3者委員会のチェックや、育児休業の普及も必要でしょう。育児休業が、中小企業、フリーで働く人にも広まること、また1歳半まで休業をとることができれば、かなり1歳児の待機児童は減るはずとのことです。

しかし、それでも3つの指針を守るためには、保育士の現状はかなり厳しいと大豆生田教授は言います。


▲大豆生田教授

 

◆なぜ、保育士は不足するのか

なぜ、保育士は不足するのでしょうか。
1保育士業務の業務過多
2子どもの安全への責任の重さ
3低賃金
などが原因となっています。

保育士の業務には、子どもの世話から離れ、事務作業を行う時間があります。

たとえば報告書類を、役所向け、園保存の報告書、保護者向けの連絡帳など、重複した内容を複数手書きで作成しなければいけなかったり、お昼寝の時間には、5分おきに実際に「どちら向きで寝ていたか呼吸をしていたか」をチェックし、↓で手書きで書類に記入するなど、最低でも3時間は必要です。しかし、保育士の数が少なければ、どうしても残業になったり、業務そのものがおろそかになってしまうでしょう。

子どもに寄り添いながら、質の高い保育を行うことは容易なことではありません。しかもこれから長時間となると、保育士のストレスも非常に激しくなっていきます。保育士の数が増え、より良い環境で仕事ができなければ、先ほど示した3つの指針を守ることもむずかしくなっていきます。

◆求められるベビーテックの活用

そのために、様々な施策のほか、保育士の負担を軽減するIoTの活用が重要であると考えられています。

2016年にアメリカで生まれた言葉「ベビーテック」は「ベビー」と「テクノロジー」を組み合わせた造語です。育児と保育に携わるすべての人を支えるITサービスと製品の総称で、これからますます様々なサービスや製品が生まれるのではないでしょうか。以下、ユニファ株式会社のサービス4つをご紹介します。ルクミー午睡チェック、ルクミー体温計、ルクミーフォトは、今年開催されたベビーテックアワード2019で受賞したサービスです。

●ルクミー午睡チェック。IoTセンサーを導入


保育園のお昼寝時間の安全管理は、非常に重要な課題ですが、5分おきに実際に「どちら向きで寝ていたか呼吸をしていたか」をチェックし、↓で書類に記入するという作業は、大変な負担です。そこで午睡センサーを園児の衣服のおなかの部分につけます。うつ伏せ状態が長時間続いたり、体動がない場合に、アラートが鳴り、保育士が気づくことができます。アプリにより、寝ている向きの矢印も自動的に記録されるので、手書き書類を作成する手間もありません。

●キッズリー。連絡帳のデジタル化


連絡帳を手書きで記入するのではなく、先生がPCで記入でき、保護者がスマートフォンで手軽に閲覧できるデジタル版連絡帳であれば、先生も保護者もより頻繁に、より深くコミュニケーションができます。

ルクミー体温計。登園時の検温・自動記録を数秒でできる


登園時に検温は、時間のかかる作業です。数秒で検温し、それぞれの子どものデータを記録するシステムです。

ルクミーフォト。記録も情報発信も簡単に


子どもが何に興味があるのか、楽しんでいるかなどを記録し、保護者と共有するために重要な写真撮影。ルクミーフォトは保育士のエプロンに取り付けて常に撮影してくれます。撮影した写真データは、先生たちの記録にもなり、保護者たちへの発信記録にもなります。

こういった技術をうまく取り入れて、保育士は人でなければできないことに集中し、心と時間に余裕を持てるようになれば、保育士は、保育自体を楽しめるようになり、保育の質は上がっていくでしょう。

講演後、ルクミー午睡チェック、ルクミー体温計、キッズリー、ルクミーフォトなどが展示されました。
参加した保育関係者は、「肌と肌をふれあうことでわかることもあるので、検温は自分でやりたいけれど、0歳児には有効かも」「午睡チェックはすごくいいと思う」など、口々に感想を言ったり、スタッフに熱心に質問をしている様子が見られました。

これからの保育園は、預けっぱなしにするのではなく、データの共有などで保護者も保育士と共に子どもたちを育てていくという意識が、より必要になって来るのかもしれません。

(取材 文 宗像陽子)

<少子化・人口減少時代に考える、変化する保育の在り方とこれから選ばれる・選ぶべき保育園とは>

■実施日時:2019年10月9日10:00~11:30
■会場 フクラシア丸の内オアゾ 東京都千代田区丸の内1-6-5丸の内ビルディング15F
■登壇者
白梅学園大学大学院特任教授 無藤隆氏
玉川大学教授・日本保育学会副会長 大豆生田啓友氏
内閣府 子ども・子育て本部 少子化対策担当 参事官 南順子氏
株式会社パパスマイル 代表取締役 永田哲也氏
ユニファ株式会社代表取締役CEO 土岐泰之氏