小学校低学年におすすめ 「セミの幼虫の羽化の観察」
夏休みといえば、帰省や旅行で野山に囲まれた自然たっぷりの土地に出かけるご家庭も多いのではないしょうか? そして、自然の中には虫がいっぱい。虫捕りに夢中になる体験をするお子さんもいることでしょう。都心でも、緑の多い公園では、虫たちに出会うことができますよね。
その体験をぜひ、自由研究の題材に。今回は、小学校低学年の子でも気軽に取り組める、「セミの幼虫の羽化観察」の体験をご紹介します。
■取り組んだきっかけは偶然だった……「セミの幼虫の羽化」
昨年の夏、小3だった我が家の次男坊が取り組んだテーマです。ただ、最初からセミの幼虫の羽化を自由研究テーマに考えていたわけではありませんでした。
蒸し暑い夏の夜、木々の生い茂る公園に、子どもたちを連れてクワガタやカブトムシがいないかと探しに行き、全く見つけられない中、「何だか木の幹に張り付いているものがいるぞ?なんだろう?」とよく見てみたところ……。
子どもたち「これ、何?」「セミの幼虫じゃない?」
私「そうだ! セミの羽化って、自宅でも観察できるみたいだよ」
子どもたち「見てみたい!」
ということで、木の幹から幼虫くんをそっとはがし、虫かごに入れて持ち帰りました。
▲日にちと、幼虫をとったときの場所と様子などをメモ。
■自宅で観察準備! 用意するものは特になし
たまたま少し前にネットでセミの幼虫の羽化の様子を見たことがあったのですが、帰宅後、再度復習。幼虫くんは、カーテンなどに引っかけてやると、少しずつ登り始め、自分の気に入った場所で止まって、羽化を始めるとのこと。その通り、カーテンに引っかけた幼虫くんは、上へ上へと移動していきます。
なかなか気に入った場所・態勢が見つからないのか、登りきってはまたカーテンの下の方に移動させる、ということを3回ほど繰り返した後、午後9時過ぎ、幼虫くんの動きが止まりました。さあ、どうやら羽化開始態勢に入ったようです。
ここからは、幼虫くんの変化の様子を1枚1枚写真に撮り、時刻と変化の様子をどんどんメモさせていきました。
■約2時間の命がけの脱皮
幼虫くんをカーテンに引っかけてから、静止した幼虫くんの背中に線が出始めて背中がはっきりと割れ始めるまでに30分以上。この時点でようやく「無事羽化が始まったようだ」とホッとします。
割れた背中から出てくるのは、普段見かけるセミの姿とは全く違う、黄緑色と薄い肌色を基調とした透明感のある体。背中が割れてから30分以上かけて、ゆっくりと体をのけぞらせるように、手足や羽をのぞかせてきます。
▲「羽化せいこう。羽がすごいひらいた」とメモ。
完全にのけぞった状態でしばし休んだように見えた後、体をググッと起こしていき、羽を広げていきます。そして、殻から完全に出た後、今まで自分を包み込んでいた殻にしがみつき、態勢を整えた後、殻から離れて並びました。
幼虫くんをカーテンに引っかけた午後8時半ごろから、2時間半、殻の背中が割れて羽化が始まってから2時間が経過。その間、暗めにした蒸し暑い部屋の中で、子どもたち全員、息をひそめながら、脱皮の様子を見守りました。
■生物の命がけの営み
「脱皮は命がけで、失敗すると死んでしまうらしいよ……」。私のそんな言葉に、子どもたちは祈るような表情で2時間半、命がけの脱皮を見守りました。
▲抜け殻と成虫を並べてパチリ。時間も忘れずメモ。
虫は子どもの頃から割と苦手で、子どもがもらってきたクワガタの飼育をきかっけに愛着がわき、かろうじてクワガタは触れるようになった私。幼虫くんの羽化の成功を子どもたちと祈りながら見守る中で、土の中で数年の幼虫生活を過ごし、羽化をへて成虫として1~2週間の命を全うしていくセミの一生に、あらためて思いをめぐらせました。命がけの作業を無事終えた後の、セミくんの透き通るような美しさと堂々とした姿に、子どもたちそれぞれ、何かしら感じるものがあったようです。
翌朝、茶色に色づいていたセミくんを、虫かごのふたをあけた状態で外に出しておいたところ、いつの間にか姿がなくなっていました。無事、羽ばたいていくことができたのでしょうか?夜に公園で出会って、翌朝までの限られた時間に、命の輝きをたくさん感じさせてくれたセミくんに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
▲やっと見慣れた「セミ」の姿に。命をかけての大仕事に感動!
撮りためた写真に、時刻と変化の様子、感想を添え、自由研究は完成しました。息子は、写真と経緯をまとめただけでしたが、お子さんの興味の深さに応じて、もっと詳しいリサーチをして、充実度の高い観察・調査記録にまとめることもできると思います。
何よりも、羽化直後の透き通るようなセミくんの姿には、親子ともども忘れられない感動を味わいました。私、実は涙がにじんでしまいました……。(千葉美奈子)