命を預かる保育者の子どもを守る防災BOOK
猪熊弘子・編
1400円+税/学研
A5・112頁
東日本大震災から今日で11年がたちました。
今日、皆さんにおすすめしたいのは1冊の本です。
「子どもを守る防災BOOK」というのがそのタイトル、その肩に、「命を預かる保育者の」とあります。
これは保育園や幼稚園の先生のために書かれた防災BOOKですが、親が読んでもとてもためになります。
コンテンツは3つに分かれています。
目次
11年前のあの日。
3.11のあのときに、何が起こったのか、各地の保育園にそのときのドキュメントを取材しています。
どれだけ多くの保育園の先生たちが、子どもたちを命をかけて守ったことでしょうか。
園で夜を過ごさざるを得ず、先生たちは、みんなで歌を歌いキャンプごっこだよと言って安心させたり、懐中電灯を天井にむけて
「わー。ドーナツだよ~。みんなで食べちゃおう」と遊んだりして、子どもたちの心を紛らわし続けました。
それは子ども達に「この日を怖い夜として記憶させないために」でした。
危機一髪の経験もありました。
避難をする前に津波が押し寄せてしまい、押入れの天袋に自分たちの足を踏み台にさせて、押し上げて助けたという例など。
保育者が、自らの命をかけて園児たちを助けて、不安を与えないように守ったということがわかります。
その使命感に心打たれます。
失われてしまった命も多くありましたが、保育者のおかげで助かった命もまた多かったのです。
PART2は、ケース別行動マニュアルです。地震はいつ何時襲ってくるかわかりません。毎日のどんなシーンのときに、どんな行動を取ればよいのか、具体的なアドバイスがとても役立ちます。
もし室内にいたら。もし散歩中だったら。もし遊園地にいたら。海や山にいたら。津波が来たら。火事が来たら。
子どもを守るために、親は一体どのようなことに気をつければよいのでしょう。
たとえば、プールにいるときには…
「慌てて飛び出さず、プールのへりにしっかりつかまって様子を見る。足を滑らせて溺れる子がいないように注意。動けるようなら水から上がって、バスタオルなどをまき、冷えを防ぐ」
といったように、とても、具体的で緻密に書かれています。そして、イラストがいっぱいなので、読みやすいですよ。ほかにも倒壊物の下敷きになったときには…などなど、そんな経験を踏まえたたくさんの人の知見が込められていることを感じます。
子どもがけがをしたら。擦り傷、打撲、骨折など症状別に応急処置の方法が書かれています。簡単な止血法は、大人も覚えておきたいですね。
震災後の子どもにみられる反応は、様々です。一見なんでもないように遊んでいても、実は子どもの心は大きく傷ついています。子どもにもたらす影響と、子どもたちのサインを見逃さないためのチェックポイントは押さえておきたいものです。
PART3は、防災チェック&ルールです。
これは園で働く人のために書かれている本ですが、災害が起こったときのために、3日間自力で生き抜くための備蓄品など、親でも参考になることが書いてあります。
実践的な意味で読んでも役に立ち、保育園の先生たちが、どういう使命感で日々、子ども達に接してくれているかを知る意味でも、ぜひ読んでみることをおすすめします。
あとに残った私たちがこの教訓を生かすことこそが、亡くなった人たちへの供養になるのではないかと思います。(ココフル編集部)