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イベント・企画

かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと

2022.07.29

「だるまちゃん」シリーズや『からすのパンやさん』といえば、多くのパパやママも小さい時に読んでもらった思い出があるのではないでしょうか。

これらの絵本に見られるような、親の子どもに対する深い愛情や、あたたかな包容力、次々と展開していく面白さ、発想の豊かさに魅入られる一方で、『かわ』、『人間』、『宇宙』といった本に楽しんだことがある人なら、きっちりと描かれた緻密な描写に感嘆したことがあるでしょう。

2022年7月16日(土)から9月4日(日)まで、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと」が開催されています。

600冊を超える作品を残したかこさとし。今回の展示では、そんな氏の創作の原点を垣間見ることができます。たくさんの原画も見られますので、親子で出かけられてはいかがでしょうか。

絵を描く科学者
絵本作家かこさとし誕生の物語

会場に入ると「第1章 絵を描く科学者 青年期に見つめたもの」には意外な絵が並びます。ピカソのような自画像、深く暗い油絵の数々。後年の軽やかなだるまちゃんたちとはまるで違う、ずっしりと重々しいタッチの作品です。

(右)ゴリさん 1955年頃 油彩

初公開!創作の原点となった紙芝居の世界
子どもたちが教えてくれた大事なこと

小さい時から絵を描くのが好きだったかこ氏、特に好きだったのは飛行機でした。飛行兵にあこがれたものの、視力が弱く断念します。

高校2年生の秋に、飛行機が墜落をして、そこから落下傘で脱出した兵士が落下傘が開かずそのまま死ぬという悲惨な事故を目撃してしまいました。翌年終戦となり、世の中の大人たちの態度は180度変わります。軍人を目指した自分を責め、大人に不信感を抱き、生きる目標すら失ってしまいます。

飛行機から落ちる落下傘。落下傘は開かず悲惨な事故となった

その後研究者として会社づとめの傍ら、川崎で子ども会の活動をボランティアでおこなうようになります。(セツルメント活動)
子ども達とのふれあいが創作の原点となり、生きる希望を見出せるようになったのでした。子どもは大人と違い、うれしいときは笑い、つまらないときはそっぽを向き、哀しいときは涙を流す嘘をつかない存在だったからです。

子どもたちのために紙芝居などを創作しながら、子どもは何を喜ぶのかをじっと観察し続けます。心に触れれば、子ども達は面白いと思ってくれる。難しいことでも子ども達がわかるように丁寧に説明するとわかって楽しいと思ってくれる。そんな経験を通して、かこ氏の絵本作家としての素地が出来上がっていきました。

この「第2章 子どもたちから教わったこと セツルメントでの活動」ではセツルメント活動時代の紙芝居や未発表の原画などを観ることができます。

セツルメント活動での「わっしょいわっしょいのおどり」を描いた絵はがきに目を止めた福音館書店の松居直氏が、かこ氏に絵本を描くように勧め、それが絵本作家としてのかこ氏の人生を決定づけました。

大人気絵本シリーズの誕生秘話
不朽の名作!「だるまちゃん」シリーズと『からすのパンやさん』

みんなが大好きな「だるまちゃん」シリーズと『からすのパンやさん』が展示されている「第3章 だるまちゃんとからすのパンやさん 名作に込めた想い」では原画や下絵のほか、誕生秘話が示されていました。「日本らしい」絵本を作りたいと考えたかこ氏は、日本ではなじみ深い「だるま」を主人公にしました。

そして、全国各地の郷土玩具を調べて、お友達として登場させて人気シリーズとなったのです。

たくさんのキャラクターたちが登場して楽しいですね。だるまちゃんたちは、遊びながらどんどん遊びを発展させていて、読んでいてワクワクしてしまいます。原画や下絵もたっぷりあって、とりわけ楽しいコーナーです。

(上)だるまちゃんとてんぐちゃん 1967年 福音館書店 (下)だるまちゃんとてんぐちゃん(下絵) 1967年

『からすのパンやさん』はとっても美味しそうなパンがたくさん並ぶところや、どんどんお客が増えていくところは圧巻です。

今回の展示では、からすのパンやさんのフォトスポットもありますので、ぜひお子さんはパンやさんになりきってみてはいかがでしょうか。

未来を生きる君たちへ
広がる創作絵本と、世界の成り立ちを伝える壮大な科学絵本の世界

かわいいだるまちゃんたちと別れを告げて次の「第4章 子どもたちに知ってほしい さまざまなこと」へ行くと、そこは科学絵本の世界です。
『どうぐ』『だいこん だんめん れんこん ざんねん』など、身近なものの中がどうなっているのかという図解から、『地下鉄のできるまで』では完成させるために知恵を絞り、汗をかく労働者の姿が緻密に描かれています。

取材日は、かこ氏の長女でかこ総合研究所・鈴木万里さんのトークがありました。鈴木さんによれば、かこ氏は、大型の科学絵本を描くときにとても時間をかけたそうです。ありとあらゆる情報を収集して勉強して、推敲して、それを削りに削って圧縮して年単位でようやく1冊目が出来上がるという風だったそうです。技術者として、絵本作家としての知恵と経験と技術をいかして『海』『人間』『宇宙』などの科学絵本の製作に打ち込みましたが、その集大成が「宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜(通称:生命図譜)」でした。

宇宙誕生からの変遷を一目で観られる状態にしたものを描き、人間の未来について考えてほしいという目的で描かれたそうです。

約1.5m×5mの大作は圧巻の一言。「第5章 いのちの成り立ちを考えたい 生命図譜に込めたメッセージ」で、原寸大に復元された複製が見られます。

 

「子どもたちは、ちゃんと自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の力で判断し行動する賢さを持つようになってほしい。その手伝いをするのなら、死にはぐれた意味もあるかもしれない」(かこさとし『未来のだるまちゃんへ』より)

そんなかこさとしのメッセージが強く伝わる貴重な展示です。小学生、未就学児は入館無料です。ぜひ多くの方に観ていただきたいと思います。

グッズショップやタイアップメニューも充実

本はもちろんのこと、「だるまちゃん」シリーズの文房具、巾着、食器などかわいいグッズが充実しています。

もちろんショップも充実。かわいくて、ついついお財布のひもが緩みます

またBunkamura館内ではタイアップメニューも楽しめます。ロビーラウンジでは50冊以上のかこさとし絵本も設置。自由に閲覧できますよ。

1Fエントランスウォールではデジタル本棚「かこさとし 表紙絵の世界」も登場。近づくタイミングにより異なる絵本が現れてビックリ!こちらはどなたでもご覧いただけますので、気楽に立ち寄ってみてはいかがでしょう。

(取材・文/ココフル編集部)

基本情報

名称かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと
主催

Bunkamura

【特別協力】加古総合研究所
【協力】NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
【企画協力】アートキッチン

WEBhttps://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_kako/
開催期間2022年7月16日(土)~9月4日(日)
住所〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B1F 地図を見る
予約・申し込み

オンラインチケット MY Bunkamura(QRチケットのみ)、Bunkamura ザ・ミュージアム、ローソンチケットほか

入館料・開館時間

入館料(税込み) 一般1400円/大学生800円/高校・中学生500円 小学生・未就学児無料。

※子ども(小学生以下)のみの入場は不可。安全管理上、保護者1名につき子ども(小学生以下)2名まで。

 

開館時間 10:00~18:00 金・土曜日は21:00まで(最終入館は各閉館時間の30分前まで)
★会期中のすべての土日祝および8月29日(月)~9月4日(日)は一部オンラインによる入場日時予約が必要です。
※状況により、会期、開館時間、入場方法などが変更になる場合ありHPでご確認ください。

問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

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