(提供:ベネッセホールディングス 写真:鈴木研一)
瀬戸内海に浮かぶ直島には、「ベネッセ ミュージアム」や「地中美術館」などの美術館やアートスポットが点在しており、アートの島としても知られています。美しい自然に囲まれたこの島でしか見られない作品が、たくさんあるとのこと。
自然の中でのびやかに過ごしながら親子でアート鑑賞したいと思い、5歳と2歳の子どもを連れて旅してきました。
後編はこちら! 自然と現代アートに触れる旅!「家プロジェクト」「豊島美術館」
目次
フェリーのデッキにて。直島が見えてきた!
直島までは、岡山県側と香川県側、どちらからもフェリーや小型船でアクセスできます。フェリーには車や自転車も乗船でき、小型船には人のみ乗船可。
岡山県の宇野港からは、1時間に1~2便の頻度で船が出ており、所要時間は片道15~20分ほどです。
私達は、香川県の高松港からフェリーで向かいました。
お天気も良く、デッキで朝日に照らされた高松市街や、瀬戸内海の島々を眺めているうちに、1時間ほどで直島の宮浦港に到着!
高松~直島間を30分ほどで結ぶ高速旅客船もありますが、小さい子ども連れの場合は、フェリーの方がおすすめかもしれません。広い船内を動き回ることもでき、自動販売機やオムツ替え台付きのトイレもあって、快適な船旅でした。
海の泡?入道雲?…‥直島港ターミナルでした!
直島の周囲は16kmほど。アートスポットの集まっている島の南半分を周るなら、自転車でも散策できる広さです。
島内を周る町営バスもありますが、点在するミュージアムやアートスポットを子どものペースに合わせて巡るなら、車や自転車がおすすめです。
私達は、フェリーが到着した宮浦港の近くで、レンタサイクルを借りました。
子どもを乗せられる自転車やキッズ用の自転車もありました。起伏のある島内の移動は、電動アシスト付き自転車だと楽です。
来島者が多く訪れる時期は、希望するタイプの自転車がすべて貸出中ということもあるようですので、事前に予約しておくと安心です。
「ベネッセハウス」北ゲート
宮浦港を出発して15分ほどで、最初の目的地「ベネッセハウス」の北ゲートに到着!
「ベネッセハウス」の私有地エリア内には、併設のホテルへの宿泊者以外の車や自転車は乗り入れができません。指定された場所に停めた後は、無料シャトルバスか徒歩で移動します。(個人の車は地中美術館かつつじ荘の駐車場を利用)
私達は北ゲート駐輪場に自転車を停め、歩いてミュージアムへ向かいました。
海沿いの道は眺めもよく、途中で島の猫にも遭遇!歩き疲れた 2歳の娘をときどき抱っこしつつ、15~20分ほどでミュージアムに着きました。
ベネッセハウス (提供:ベネッセホールディングス 写真:山本糾)
「ベネッセハウス ミュージアム」は、自然・建築・アートの共生をコンセプトにした美術館。1992年の開館以来、各地から多くの人が訪れるアートスポットです。
安藤忠雄設計の建物はホテルと一体になっており、存在感がありながらも自然豊かな島の景観にしっくりと溶けこんでいます。
ベネッセハウス ミュージアム (提供:ベネッセホールディングス 写真:大林直治)
島内のミュージアムやアートスポットは、事前のチケット購入や予約が必要な施設、予約不要な施設とさまざまです。「ベネッセハウスミュージアム」には、予約なしで入館できます。
展示室は天井が高く、大きな窓からは瀬戸内海を一望することができます。
美術館の展示室の窓は、作品保護のために通常は小さめのことが多いそうです。このミュージアムの窓は、あえて大きめにつくられているとのこと。
地下1Fから2階までの各階のあいだは、一部階段の箇所あるものの、スロープなどでゆるやかにつながっています。特に決まった順路もありません。
自然光の差しこむ館内は、明るく開放的です!
ヤニス・クネリス"無題" (提供:ベネッセホールディングス 写真:渡邉修)
展示されている作品は、アーティストが併設のホテルに滞在しながらこの空間のために制作した“サイトスペシフィック・ワーク”やコレクション作品なのだそうです。
例えばギリシャ出身のアーティスト、ヤニス・クネリスの作品。遠目には、華やかに装飾された壁面のように見えたのですが、実は島で拾い集めた流木や、古い陶器や着物などを鉛板で巻いて作られたものなのだそう。見る距離や人によって、がらりと印象の変わる作品かもしれません。
安田侃"天秘" (提供:ベネッセホールディングス 写真:山本糾)
安田侃の『天秘』は、触ったり靴を脱いで登ることのできる作品です。
大理石でできた作品を触ってみると、すべらかなのですがツルツルでもなく、触り心地がいい!ゴロンと寝転んで日向ぼっこする子どももいるとのこと。ベッドにしたくなるのもわかる感触とフォルムでした。
館内にはほかにも、「これはなんだろう?」と立ちつくしてしまうようなユニークな作品が展示されています!作品のそばに解説はなく、解釈は見る人に委ねられています。
柳幸典の『ザ・ワールド・フラッグ・アント・ファーム 1990』は、プラスチックケースに色つきの砂を詰めてつくった200あまりの国旗のなかに、アカアリを入れた作品。チューブでつながった国旗の中を移動するアリの痕跡を見入ってしまいます。
どれも、このミュージアムでしか見られない作品です。
夫と交代で前のめり気味の子どもたちを見守りつつ鑑賞しましたが、アートに囲まれた気持ちのいい空間を歩いていると、自然とリラックスできました。
館内には、カフェやレストランもあります。
2階のミュージアムカフェは眺めもよく、瀬戸内レモン果汁入りのソフトドリンクなど、飲み物の種類が豊富!館内に展示されている宮島達男の作品『Counter Circle No.18』をモチーフにしたオリジナルスイーツも楽しめます。
レストランは、フランス料理を提供する「テラスレストラン」と、「ミュージアムレストラン 日本料理 一扇」があります。「日本料理 一扇」は、6歳以上から利用できるレストランとなりますが、「テラスレストラン」には子ども向けのメニューもあります。
(提供:ベネッセホールディングス 写真:鈴木研一)
作品は館内だけではなく、屋外にもあります。
ミュージアム周辺の海岸沿いや林の中などに18もの作品が点在していますので、ガイドマップを片手に散策してみてくださいね!
李禹煥美術館 (提供:福武財団 写真:山本糾)
ベネッセハウスの私有地内を地中美術館方面へ移動する途中にあるのが、韓国のアーティスト・李禹煥(リ ウファン)の作品を公開する「李禹煥美術館」です。
筆を使って描かれた平面作品や、自然石や鉄板でつくられた彫刻は、大胆でありながら静謐さも感じられ、安藤忠雄の手がけた建物とも心地良く調和しています。
子どもたちが静かに鑑賞できるのか、少し心配しながら入館……。ですが、最近色の名前を言えるようになってきた娘は、平面作品を指さして「青!」「オレンジ!」など口にしなが終始ご機嫌でした!
別の展示室では、「ママ、上を見て」と5歳息子。
顔を上げると、展示室の天には窓があり、張り出した木々も見えます。窓越しの景色は、夕方のようにも真夜中のようにも見えます。
「今、お昼なのに。暗いね…」
親子で天井を見ながら、一瞬、今いる時刻と場所があいまいになるような、ふしぎな気持ちになりました。
建物までのアプローチが、高いコンクリートの壁によって構成されていたり、屋外には大きなアーチ状の彫刻『無限門』もあります。子どもといっしょに大人も駆けだしたくなるような、のびやかな気持ちになる美術館でした。
地中美術館 (提供:福武財団 写真:藤塚光政)
ベネッセハウスや李禹煥美術館にほど近い場所にあるのが、2004年に開館した「地中美術館」。
入館にあたっては、美術館のWEB サイトで販売されている、15分ごとの日時指定入館予約チケットが必要です。美術館の駐車場内にあるチケットセンターで入館手続きをしてから美術館へ向かいます。
周囲の景観に配慮してつくられたこの美術館も、安藤忠雄設計によるものです。
「地中美術館」という名前のとおり、建物の大部分は地下にあります。少し暗い場所もありますが、どの階にもやわらかな自然光が差しこんでいます。
館内には常設展示室が3つあり、部屋ごとに、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレル、クロード・モネの作品を公開しています。
モネの『睡蓮』シリーズの中から5点が公開された「クロード・モネ室」も、地下にありながら自然光につつまれていました。訪れる季節や時刻によっても、見え方や印象が変わってきそうです。
うす暗い室内と明るい中庭を、上がったり下ったりしていると、しだいに何階のどのあたりにいるのかわからなくなってきます。息子はすっかり探検気分!館内にはエレベーターもありますが、2歳娘もがんばって階段を上り下りしていました。
四季の草花に彩られた「地中の庭」の小路
「地中美術館」とチケットセンター・駐車場のあいだは、少し離れています。
大人の足だと2、3分程度の道のりには、館内に展示されているモネの『睡蓮』を彷彿とさせる蓮の葉の浮かんだ池があります。池のそばの小路も車道とは分かれていて歩きやすく、子どもたちは時どき立ち止まって草花を眺めながら、行き来を楽しんでいました!
後編 自然と現代アートに触れる旅!「家プロジェクト」「豊島美術館」に続きます!
(取材・文 桐谷きこり)
名称 | ベネッセアートサイト直島 |
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WEB | https://www.benesse-artsite.jp/ |
関連情報 | ■ベネッセハウス ミュージアム ■李禹煥美術館 ■地中美術館 |